医療保険で大損!申請すれば戻ってくるおカネがもらえない人が続出中

医療保険と「医療費控除」の微妙な関係
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医療費控除を申請することで戻ってくるおカネ

具体的に計算したほうが、わかりやすい。佐藤さんのケースで考えてみよう。佐藤さんは30万円の医療費に対し、全額にあたる30万円の保険金を受け取った。

ただしそれは、これまで月々の保険金を合計106万円も支払ってきたから、得られたおカネだ。

ここで、もし佐藤さんが医療保険に入っていなかった場合のことを考えてみよう。30万円の医療費を佐藤さんは貯蓄から出す。だが、医療費控除を申請することで戻ってくるおカネがある。

まず所得税については、翌年確定申告をすれば4万円が戻ってくる。30万円から10万円を引いた20万円が控除の対象になり、そこにAさんの場合の所得税率20%をかけた金額だ。ここからさらに、住民税の分として2万円分も得をする(住民税は一律10%、翌年の住民税が安くなる)。

つまり、30万円の医療費がかかったとはいえ、6万円分は税金が戻ってくるため、支払った額は実質24万円ということになる。

佐藤さんがこれまで支払った保険料は106万円なので、4回入院するほどの大病を患ったとしても、支払った保険料の元はとれないという計算になる。

 

医療費控除で戻ってくる金額は、税率が異なるため所得によって違う。所得が高く税率が高い人ほど多くおカネが返ってくる仕組みだ。だが、この制度は収入が高くない人にとっても大いに活用する意味がある。

ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子氏が解説する。

「実は、所得が200万円未満の方は、医療費が10万円を超えなくても医療費控除の対象となるのです。例えば、公的年金による所得が100万円の場合、医療費が5万円以上であれば控除の対象となります」

年金生活だから確定申告はいらないと思っている人も、医療費が多くかかった時には控除に頼ることで得できるのだ。

さらに医療費控除には優れた点がある。それは、家族で医療費を合算できるという点だ。

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佐藤さんの場合で考えてみよう。佐藤さんの妻は今年の夏の初めごろに階段で転倒し足首を骨折した。入院とまではいかなかったが程度は重く手術を行うことになり、リハビリも含めて実質負担で20万円ほどの治療費がかかった。

ここで、夫の治療費の30万円と合わせて10万円を引いた40万円を医療費控除で申請すると、還付金の合計は8万円、住民税は4万円分安くなる。もし妻も手厚い保険に入っていたとすれば、このおカネは戻ってこないのだ。

医療保険と公的保険の関係について、株式会社ファイナンシャルアソシエイツの藤井泰輔氏は語る。

「公的保険では年収370万円未満なら、75歳を超えれば1割負担で済みます。高額療養費制度や医療費控除という制度もある。民間の保険に入る以前に、そもそも高額な公的保険料を払っているということを多くの人は忘れているのです」

日本の公的医療保険は世界的に見ても非常に手厚いものだ。その分、現役世代は多くの保険料を納めている。その上に高い民間保険に入るのは屋上屋を架すようなものなのだ。

しかし、保険会社の営業は、医療保険に入ることで損をする点を説明するどころか、客の不安を煽って加入を促すのが常套手段だ。