若者が「朝日新聞ぎらい」になった謎を考える

共産党が保守で自民党がリベラル?
元木 昌彦, 橘 玲

朝日は自ら範を示すべき

:森友や加計の問題を掘り起こして権力を批判するのは、メディアの役割として当然です。でも今は、どんなことをやってもすべて党派対立に還元され、「朝日は反安倍(反日)だから意図的にやってるわけでしょ」と言われてしまう。逆に読売や産経がどんな報道をしても「政権に媚びてる連中の言うことを真面目に取り上げたってしょうがない」とリベラルの人たちは言うわけですから、そもそも議論が成り立たない。

月刊『Hanada』や『WiLL』をなぜ買うかというと、党派性がはっきりしているからです。そこではリベラルを擁護するような、不愉快な記事は絶対出てこない。自分にとって気分のいい話しか書いてないから、お金を払う価値があるわけです。「日本人」という脆弱なアイデンティティしかもてないひとたちの精神安定剤みたいなものですね。

 

元木:苦境に立たされている朝日に何かいいやり方はあるのでしょうか。

:朝日の社内にも憲法九条を変えたほうがいいと思っている人はたくさんいるでしょう。憲法学者は難しい理屈で、むりやりのまま今でも自衛隊は合憲だと言いますが、ふつうの日本語ではとうていそうは読めません。憲法というのは国の設計図なんだから、中学生でも納得できるように書くべきです。だけど、こういう当たり前の主張をすると許してくれない「左派」の読者をコア層にたくさん抱えていて、身動きがとれなくなっているんじゃないでしょうか。

戦後日本の一番の不幸は、愛国を右翼の独占物にしてしまったことです。「なぜ自分が生まれた国を愛してはいけないのか」という若い人たちの素朴な問いに、リベラルはうまく答えることができません。

元木:記者クラブの問題も男女格差の問題も身内に抱えながら、他の批判はするというのではメディアとしての信頼は落ちる一方でしょう。今日はありがとうございました。

(本稿は月刊誌「エルネオス」9月号掲載記事より抜粋しました)

元木昌彦(もとき・まさひこ):編集者。1945年生まれ。「週刊現代」や「フライデー」の編集長として権力批判の誌面づくりを貫いた。メディア規制の動きに反対の論陣を張る。2006年11月、講談社を退社。オーマイニュース元社長。上智大学、明治学院大学、大正大学などで講師。インターネット報道協会代表理事。
橘玲(たちばな・あきら):作家。1959年生まれ。2002年国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。2006年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補となる。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラー、『言ってはいけない残酷すぎる真実』(新潮新書)が48万部を超え新書大賞2017に。