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若者が「朝日新聞ぎらい」になった謎を考える

共産党が保守で自民党がリベラル?

元朝日新聞の社長だった広岡知男氏が私(元木昌彦)にこう言った。

「昔は朝日とケンカしたって勝てないから、政治家だって文句を言ってくるヤツはいなかった」

珊瑚記事捏造事件が起きた1989年のことであった。

そうした朝日文化人の傲慢さや上から目線を週刊誌で批判すると、よく売れた。

私は朝日の古くからの読者である。最近の森友・加計学園問題追及は、朝日の紙価を高めていると思っている。だが、朝日新聞出版から『朝日ぎらい』を上梓した橘玲氏によると、最近の朝日批判の盛り上がりは、昔と位相を異にしているという。

朝日に代表されるリベラル派が、「憲法にせよ、日本的な雇用にせよ、現状を変えることに頑強に反対する」守旧派に成り下がってしまったと喝破する。保守派である安倍政権は、リベラルな政策を次々に打ち出して、若者たちに支持されているというのである。

『言ってはいけない』(新潮新書)もそうだったが、実に刺激的な本である。オールドリベラリストの私は、おずおずと橘氏のお叱りを受けに行ってきた。

保守とリベラルの「逆転現象」

元木昌彦:このところリベラル批判本がずいぶん出ていますが、橘さんのお書きになったものは説得力があります。私はオールドリベラリストですから、自分が批判されていると思って読みました(笑)。

この本に、今の10代後半から20代の若者たちは、共産党が保守、自民党政権がリベラルだという認識だと書いています。われわれにとってはショックでした。

橘玲:早稲田大学の田中愛治さん(政治学者で11月から17代総長に就任予定)の研究ですね。年配の人は当たり前のように安倍政権は右で共産党は左だと思っているけれど、実は30代ぐらいを境にして左右逆転して、今の若者は自民党がリベラルで共産党は保守だと思っています。

若者が保守化したのではなく、ずっとリベラルなままなのに、かつての「リベラル政党」が保守化してしまった。その結果、現実的な政治をする自民党しか選べなくなったと考えると、今起きていることがすっきり理解できます。

元木:たしかに共産党っていうのはゴリゴリの守旧派ですからね。

:憲法から築地市場まで、「変えるな」しか言わないですから(笑)。客観的に見ればどちらが改革でどちらが保守かは明らかですが、既成のメディアや知識人は古い図式から逃れられず、「最近の若者は右傾化した」と騒ぐわけです。当の若者たちが、自分たちが保守化・右傾化したと言われることに納得していないことは完全無視ですね。

 

元木:安倍政権というのは、国際社会ではリベラル、若者に対してはネオリベ(新自由主義=個人の自由や市場原理を再評価し、政府の個人や市場への介入は最低限にする)、既存の支持者に対しては保守、日本人のアイデンティティ主義者にはネトウヨと使い分けているから、あれほどモリ・カケ問題で噓をつきながらも支持率が急落しない。あれは安倍さんだからできるんですか。

:いや、安倍政権が終わってもほとんど変わらないと思います。超高齢社会で少子化が進み、1000兆円の借金を抱えていては、たとえ野党に政権交代したところで政策の選択肢なんてほとんどありません。

国際政治の世界では長く権力を握っている政治家が尊敬されますが、「極右」は相手にされません。安倍さんもそれがわかって、靖国にも行かなくなったし、東京裁判は「勝者の判断によって断罪された」なんてことも口にしなくなりましたよね。

元木:「戦後レジームからの脱却」も言わなくなったですしね。

:安倍政権は「保守」のはずなのに、経済政策ではリベラルに舵を切って、保守派が守ろうとしている日本的雇用の破壊に邁進している。政治的な知性から言えば、たいへん賢い人だと思う。

移民の受け入れや外国人参政権など、日本人のアイデンティティを逆なでするようなことでは大騒ぎになりますが、そこにさえ触れなければ、右派も含め大半の国民はリベラルな政策で文句はないわけです。今みたいな人手不足では「一億総活躍」しかないことは誰だってわかりますから。そこに気がついて、安倍政権はリベラルに「反転」したんだと思います。

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