左はポンペオ国務長官(Photo by gettyimages)

北朝鮮の強硬姿勢に見切りをつけたトランプの「容赦なき次の手」

融和ムードは風前の灯とみるべきだ

もう騙されるわけにはいかない

北朝鮮の非核化をめぐって、米国のトランプ政権が再び、強硬姿勢に転じる可能性が強くなってきた。マティス国防長官は米韓合同軍事演習の再開を示唆した。6月の米朝首脳会談以来の対話ムードは、もはや風前の灯火だ。

マティス長官は8月28日、記者会見で「(6月12日の)シンガポールにおける米朝首脳会談を受けて、米国は誠意の表現として大規模演習をいくつか中止したが、現時点では、もはや追加的な演習を中止する計画はない」と述べた。

トランプ大統領は米朝首脳会談の後、米韓合同軍事演習について「コストが高くつくし、非常に挑発的だ」として中止する考えを表明し、実際に8月の「乙支(うるち)フリーダムガーディアン」など3つの演習を中止していた。

それだけではない。

マティス会見に先立って、トランプ氏は24日、発表済みだったポンペオ国務長官の訪朝をキャンセルするよう長官に指示した。いったん公表した国務長官の外国訪問を大統領が中止を命じる展開は、まったく異例である。

 

国務長官の訪朝中止と演習再開は「非核化で何をグズグズしているのか。いつまでも黙っていないぞ」という北朝鮮に対するサインであるのは間違いない。

トランプ氏は首脳会談後、一貫して金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を高く評価し、交渉進展に期待していた。だが、いまや歯車は逆回転し始めている。相次ぐ決定は交渉が進展しないトランプ政権のいらだちを示している。この先、どうなるのか。

結論を先に言えば、私は交渉による成果に悲観的だ。米国が軍事演習を再開したくらいで、正恩氏が折れてくるとは思えない。もともと演習中止は正恩氏にとって、望外の成果だったはずだ。正恩氏は、のらりくらりと米国の圧力をかわそうとするだろう。

一方、トランプ氏は成果が出ないなら、北朝鮮に対して段階的に厳しい態度で臨むだろう。自分が寄せた信頼は裏切られたとはっきりすれば、高い代償を求めるはずだ。11月の米中間選挙への影響をにらめば、なおさらである。簡単には退けない。

興味深いのは、ポンペオ訪朝の直前、北朝鮮は朝鮮労働党副委員長名で「交渉が危機に瀕しており、崩壊する恐れもある」との書簡をポンペオ氏に送っていた事実である。この時点で北朝鮮は強腰だった。だが、演習中止を示唆された後、8月30日時点で反応がない。

強腰姿勢に変わりがないなら、演習再開には直ちに反発したはずだ。それがないのは、対応に苦慮しているのだろう。すなわち「北朝鮮を動かすのは、強い圧力だけだ」という路線の正しさを証明している。

トランプ氏とすれば、2度と騙されるわけにはいかない。大統領自身が交渉停滞を認め、いったんセットされた国務長官の訪朝中止を決めた点は重要だ。大統領はようやく目を覚ました。朝鮮半島情勢は以前にも増して緊張する公算が高い。

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