# トヨタ # 自動運転

「完全自動無人運転」自動車など幻想と言い切れるこれだけの理由

一方、アシスト運転技術の未来は明るい
大原 浩 プロフィール

誰が責任をとるのか?

日本の2017年の交通事故死者数は3694人である。これでも前年より210人減っており昭和23年に統計を取り始めてから最小なのだ。

たとえ「完全自動運転車」が100%のシェアをとっても、歩行者、自転車、オートバイなどは混在するから、それなりの死亡者は出るはずである。

さらに100%のシェアをとるまでの、途中過程で生じる複雑な交通システムの中では、自動運転車の事故率は既存の人間が運転する自動車と大差がないと思われる。

そもそも「完全自動運転車」も機械であるから当然故障する。したがって(死亡)事故ゼロは不可能と思われ「誰が責任をとるのか」という問題がクローズアップされる。前述のオーナーが責任をとって保険でカバーするというやり方は実現性に乏しい。
 
さらに、自動車の運転は、たとえ海水浴に行くためであっても法律上は「業務」とされ、死亡事故を起こせば「業務上過失致死」になるので、普通の過失致死よりも重い刑罰を受ける。実際「交通刑務所」というものが存在するくらい、この罪に問われる人は多いのだ。

また「事故を起こした船の船長が乗客を避難させた後、自らは事故の責任をとって船と運命を共にする」という話が美談として語られるが、その裏には「船長の重い賠償責任」があった。

昔は、船長が運行に関する「無限責任」を負っていて、生き延びて帰っても裁判で巨額の賠償金を請求され「死んだも同然」の生活を余儀なくされたのだ。だから「名誉ある死」を選ぶ動機があったのである。

ハーバード大学の白熱教室では無いが、「目の前に幼児が飛び出してきた。急ハンドルを切れば幼児の命は80%の確率で助かるが、80%の確率で自動車は側壁にぶつかってあなたは死ぬ。さてどうする?」と問われたとしよう。

実のところ、私自身も答えを出せない問題だが、このシチュエーションをどのようにプログラムするのか? 今ここで結論を出せないのであれば、「完全自動運転」が実現するとは思えない。

 

アシスト運転は、ますます発展する

これまでさんざん「完全自動運転」=「無人運転」に否定的なことを述べてきたが、私が否定的なのは「完全自動運転」であって「自動運転」=「アシスト」はむしろ積極的に推進すべきだと考えている。

鉄道、船舶、飛行機において自動(アシスト)システムが果たしてきた役割は大きい。人間だけが運転(操縦)を行うよりも、機械やコンピュータのアシストを受けたほうが、はるかに安全かつ正確に運行できる。

自動車においても、車間の警報や自動停止システムは安全面で大きく貢献しているし、オートクルーズは高速走行の際とても便利である。

さらには、ブレーキとアクセルの踏み間違えや、逆走を感知してアジャストするシステムの普及も待ち望まれる。特に高齢ドライバーが増えている現状では、肉体的な衰えをカバーするシステムは重要である。さもなければ、高齢ドライバーの運転には厳しい制限を設けなければならなくなりそうである。

ただし、コンピュータや機械に責任をとらせることはできない。事故を起こしたからといって、機械やコンピュータを投獄したり死刑にしても全く意味が無い。

責任をとれるのは人間だけであり、自動化が進んでも責任をとる存在としての人間の関与が必要なことは、鉄道、船、飛行機の自動化の歴史の中ですでに明らかである。