# トヨタ # 自動運転

「完全自動無人運転」自動車など幻想と言い切れるこれだけの理由

一方、アシスト運転技術の未来は明るい
大原 浩 プロフィール

人命は尊いから

実のところ、たまに起こるであろう「人身事故」を除けば、電車も飛行機も「完全自動運転」に近い技術水準にある。

しかし、たまに起こる「人身事故」を無視できないのは容易に理解できるはずだ。自動運転の飛行機が墜落して数百名の方が無くなったら天地がひっくり返るほどの騒ぎになり、想像を絶する激しい責任追及が行われるはずである。

そのターゲットが飛行機メーカーになるのか、飛行機会社になるのか、許可した政府になるのかは不明である。
 
交通機関というのは、自動車であろうが飛行機であろうが鉄道であろうが、問題が「人命」に直結する。デジカメが不具合で写りが悪いとか、腕時計が止まってしまったとか言うレベルの話では無いのである。

以前米国でトヨタ車のリコールが大問題となった。実のところテレビで放映されたビデオは捏造であったことが分かったが、大騒ぎになったのは「ブレーキ」という死に直結する箇所の不具合であると報道されたからである。

以前人命が軽視されていた時代には、「自動車の不具合で10人死亡しても補償金が1人3000万円であれば3億円。数十億円もかけてリコールするのは割に合わない」と考えリコールを実行しないメーカーもあったが、現在それは絶対許されない行為である。

また、自動運転に多数参入しているIT業界の企業は「未完成のまま市場に商品を出して、ユーザーに不便をかけながらそのフィードバックによって製品を修正する」という原始的な文化の中で育っている。

部品1つの不具合でもリコールに発展して巨額の損失を被るという自動車業界の真剣での戦いに比べれば、竹光や竹刀でチャンバラを行っているようなものだ。

彼らが「完全自動運転」の将来にお気楽なのも、リコールの恐ろしさを知らないからだ。厳しく言えば、未完成品をとりあえず市場に出してみて、何人か死んでから改良すればよいと考えているのかもしれない。最近のウーバーの死亡事故への世間の反応を見て、少しは態度を改めたかもしれないが……。

3万点もの部品を組み立てる自動車の不具合によるリコールは決して珍しく無く、頻繁に耳にする。いったいこの問題はどのように解決するのか現在不明である。

 

日本政府はオーナー責任主義

日本政府は、完全自動運転車のオーナーが責任を負う形にして、保険でカバーさせる方針だ。

そして、自動車そのものの不具合による事故の場合は、オーナーから自動車メーカーに請求することになっているが、そのような手法は機能しないと考える。

自動車のオーナーにとって「完全自動運転車」はブラックボックスであり、その不具合など証明できる可能性などほとんどない。現在のままでは、事故が起こればオーナー(保険会社)の泣き寝入りということである。

ちなみに、ディープ・ラーニングなどのコンピュータの進化の過程で大きな問題になっているのが「なぜコンピュータがそのような判断をしたのかわからなくなってきている」ことである。

特に「学習機能」によって成長するコンピュータの判断の根拠を明示するのは(現実的には)ほぼ不可能である。つまりコンピュータに運転を任せるということは、どのような判断をするのかわからない人物に運転を「お任せ」することになるのだ。

人間などの場合は「人格」、「人物、「性格」などのアナログ基準で運転車の適性を判断するが、それに相当するようなコンピュータ選別の基準は生まれるだろうか?