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「完全自動無人運転」自動車など幻想と言い切れるこれだけの理由

一方、アシスト運転技術の未来は明るい
大原 浩 プロフィール

素晴らしい日本の鉄道運行システム

日本の安定しかつ安全な社会に数々のすぐれた「運営システム」が貢献していることは疑いようが無いが、その代表例としてあげられるのが鉄道運行システムであろう。

訪日外国人が、日本の鉄道が1分の遅れもなく運行されているのを見て腰を抜かすという話はよく聞くが、これは日本人の「指さし確認」をはじめとする正確性へのこだわりと、すぐれたシステム運営能力のおかげである。

日本の鉄道車両の性能もすぐれているが、重要なのは運行システムの精度である。
 
ATS(自動列車停止装置)の最初の実験が1921年(大正10年)に、東海道本線の汐留・ 品川駅間で行われている。さらには1927年に、現在の東京メトロ銀座線が日本初のATS実用運用路線として開業していることには驚かされる。

鉄道の「自動運転化」の方がはるかに先行し、しかも世界一ともいわれる運行システムを誇っているのにいまだに「ゆりかもめ」くらいしか「完全自動運転電車」が実現できていない。

ゆりかもめは、踏切が無く高架式のため線路(正確には1車両4つのゴムタイヤで、コンクリート製の専用の道路を走る)に人が侵入するリスクもほとんどない。

高いフェンスで線路が囲まれ、踏切が無い新幹線も似たような条件だが時速数百キロの高速走行を行うため「完全自動運転」は実現できていない。
 
もし、自動車による完全自動運転が実現するにしても、当面の間「ゆりかもめ」的な、場所と路線と速度が限られたコミュニティバス程度のものにとどまるはずである。

 

電車、飛行機、船の自動運転は簡単

2本のレールの上しか走らず止まるのは駅だけという鉄道は、高速道路から路地裏さらには沼地や海岸まで自由に駆け抜ける自動車に比べたら、驚くほど単純なシステムである。

しかし、それでも1921年以来「完全自動運転」がゆりかもめなどの例外を除いて実現できていないという事実を受け止めなければならない。

船舶においても同様で、運行の自動化はかなり進んでおり、巨大なタンカーやコンテナ船は20名前後で運営されているが、「完全自動運転船」は実用化されていない。

船舶も、狭い港を出入りするとき以外は、自然の脅威は別にして、車間ならぬ船間などを気にする必要はあまりないにもかかわらずだ。

そして忘れてはならないのは、飛行機である。飛行機も空港から空港へ決まったルートを飛ぶだけであるから、運行システムは極めてシンプルである。

世界初の飛行機の自動運転システム(オートパイロット)が導入されたのは電車よりは遅いが、それでも1950年代後半である。搭載されたのは米国空軍のF-106「デルタダート」であったが、飛行機単独のシステムでは無く、地上の半自動式防空管制組織とリンクした巨大なシステムであった。

その後、民間旅客機にも自動運転システム(オートパイロット)が導入されるようになったが、現在でも完全自動運転の旅客機は見かけない。

しかし、操縦そのものは離着陸以外は完全に自動になっているし、離着陸も技術的には完全自動化できる。つまり、機長をはじめとして驚くほど高給取りで、1年のほとんどが休日であるパイロットたちは、実質的に計器を眺めるためだけに搭乗しているということになる。しかし、それには理由がある。