# スピリチュアル

女性器を神聖視する「子宮系」女子たちの知られざる苦悩

スピリチュアルと妊娠・出産を巡る不安
橋迫 瑞穂 プロフィール

「子宮系」ムックに登場する産婦人科医は、子宮の病気を解説するだけでなく、最近では妊娠・出産に年齢の限界があることを強調している。

年齢の限界に関する記事は、「子宮系」で、おそらく二つの役割を担っている。一つは、35歳という具体的な年齢を強調することで、女性の決断を迫る役割である。二つ目は、医学的に見れば、前向きに妊娠・出産に挑むことが、結局のところ「正解」であると女性を後押しする役割である。

しかし述べたように、そうした見解は必ずしもニュートラルな見地から発せられているわけではない。国の政策の影響を受けることもあれば、一部のデータが強調され、特定の見方ばかりが押し出されるケースもある。

妊娠・出産が「正解」であるか否かは、最終的に当事者によるところが大きい。その人の人生に取っての出産・妊娠なのだ。一方、「子宮系」のムックにおいては、医師が自分の経験を医学知識と混ぜ、より影響力の高い言葉を発することで、女性の「出産せねば」という焦燥を駆り立てている側面もあるだろう。

しかし、それを読んだ全員がすぐに出産に向かえるわけではない。そこで生じた焦燥、葛藤がさらに、「スピリチュアル」なメソッドを肯定的に受け止める素地を形成していると考えられる。

 

社会には期待をしない

以上に見てきたように、「子宮系」は子宮に「聖なるもの」を育むことを通して、「女性らしさ」を高めるだけでなく、妊娠・出産に向けた準備のための方向性を示している。そこからは、妊娠・出産が自分自身の人生を激変させる、女性にとって重い決断であることが浮かび上がる。 

そして、妊娠・出産をできるだけ肯定しようとする「子宮系」からは、女性の不安と、そして諦念が読み取れる。

妊娠・出産によって人生が激変するのは、社会の仕組みが女性に対して一方的に負担を押し付けるからである。だが年齢のタイムリミットを前に焦燥を感じても、周囲の人びととそれを共有することは難しい。制度を変えるなんてもってのほかだ。

そこで、あえて自分の内にある子宮と向き合うことで、不安を鎮めたり、出産へのモチベーションを高めたりし、相対的に〈社会〉の側の問題に対しては目をつぶる――これが、一部の女性にとって「子宮系」が持つ魅力なのではないだろうか。それでもなお、「子宮系」に手をのばす女性たちを、わたしたちは嗤うことができるだろうか。

他方で、今回紹介したのは「子宮系」のほんの一部にすぎない。「子宮系」関連の書籍は数多く発行されており、それぞれに独自のカリスマが、子宮と「聖なるもの」とを結びつけて、女性に向けた人生観や価値観を説いている。

最近では、ブログから人気が出た「子宮委員長はるちゃん」が注目されている。彼女は食事や体操といったメソッドを用いず、子宮そのものを神聖視している。また、独自の家族観や金銭観、さらに膣に入れるパワーストーンを販売したことが問題視されてから、アンチも非常に多い。

また、生理用品が発達してない時代の女性を称揚し、生活習慣を「自然」に近づけることで子宮の健康を取り戻すことを目指す「子宮系」も人気を集めている。さらに、子どもが生まれる前の記憶を語るという、「胎内記憶」をテーマにした映画が人気を集めているのも、「子宮系」の一つと言えるだろう。

「子宮系」は妊娠・出産だけでなく、母子関係そのものにも目を向けているのである。ひきつづき、「子宮系」の展開とその背景について検討を進めていきたい。

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