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女性器を神聖視する「子宮系」女子たちの知られざる苦悩

スピリチュアルと妊娠・出産を巡る不安
橋迫 瑞穂 プロフィール

医学的な知識だけでは解消されない不安

だが、医学は妊娠・出産に向けた知識を教えてくれるが、現在の不安やプレッシャーを緩和してくれるものではない。そこで、スピリチュアルなメソッドの数々が登場する。

スピリチュアルなメソッドは結局のところ、子宮だけでなく、妊娠・出産に向けた女性自身の身体そのものを「聖なるもの」として価値づける役割を担っている。そのことで、先行きに対する現時点での不安や悩みを癒す働きを担っていると考えられる。つまり、「子宮系」とは体内にある「聖なるもの」に従うことで、日々の迷いを振り切り、悩みを乗りこなすメソッドと言えるかもしれない。

そして「子宮系」は最終的に、母になることに対しての迷いを払拭する役割をも担っているのではないか、と考えられる。

子供を産むことが自明と考えられていた時代とは異なり、現代の日本社会は、妊娠・出産という選択が必ずしも正解とは言えない。前述の通り、社会からのサポートは十分ではなく、たとえ子供が欲しくて出産をしたとしても幸せになるとは限らないからである。

〔PHOTO〕iStock

そうしたなかで「子宮系」は、いつか来る出産のチャンスに向けて踏ん切りをつけるため、「聖なるもの」を子宮に育むことを通して、「産む自分」をできるだけ肯定し、できる限り手放さないことを目的としているのではないか。

しかし、母になることを意識的、積極的に肯定しなくてはならない態度からは逆に、現代社会における女性たちの葛藤そのものが垣間見えないだろうか。

 

「子宮系」がジレンマを強化する可能性もある

ここまで、「子宮系」が、妊娠・出産の可能性を保持したいという思いに寄り添うことで、注目されてきたのではないかと論じてきた。しかし、「子宮系」ムックは女性の出産とキャリアの選択におけるジレンマを緩和するだけではなく、逆に、ジレンマそのものを強化する事態に追い込んでいる可能性もある。

近年、「卵子の老化」が注目を集めている。「卵子の老化」とは、加齢とともに女性の卵細胞が老化し、妊娠・出産に至りにくくなるとされる医学的な見解である。NHKが特集を組むなどして、社会から一躍注目されるようになった。他方で、「卵子の老化」という言説は、医師の偏った見解や国の少子化対策からの影響を受けているとする批判もある。

「卵子の老化」という言説は「子宮系」でも重視されている。その一つとして、20代向けのファッション雑誌『Oz Plus』(スターツ出版)が、2014年に出した「子宮力アップ&からだケアBOOK」を紹介したい。

このムックもまた、子宮に関する医学的知識と、スピリチュアルなメソッドによって構成されている。特徴的なのは、巻末に「35歳で女子の子宮やカラダやライフスタイルはどう変わる?今から考えておきたい妊娠・出産のこと」という題の記事が掲載されている点である。

冒頭では、産婦人科医が20代の女性に向けて、35歳を過ぎると卵子の質が低下し、流産の危険性や、赤ちゃんの染色体以上の可能性が高まることをレクチャーする記事が掲載されている。

また、別の産婦人科医が年齢に応じた流産率をグラフで紹介した上で、「子供を産んだらなにかを諦めないといけないと思っている人も多いでしょ?でも私は産んでみて『もとの自分に新しい幸せが降ってくることだ』と思った。子供はかわいい!」というコメントを寄せている。

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