# スピリチュアル

女性器を神聖視する「子宮系」女子たちの知られざる苦悩

スピリチュアルと妊娠・出産を巡る不安
橋迫 瑞穂 プロフィール

「子宮系」のケアメソッドの代表的なものとして、子宮を温める「温活」がある。温活とは、文字通り子宮を温めるメソッドを指す。子宮が「冷え」ていると、精神的な不調や肌荒れを引き起こすとされているからである。温活の中身としては、子宮にあたる部位をお灸やカイロで直接温める方法が掲載されている。

また、温活の一環として、漢方を取り入れた食事をとったり、「美子宮ヨガ」や「骨盤体操」など子宮の血流を良くする運動も紹介されている。規則正しい生活を送る、自分と対話するための日記をつける笑ってすっきりするといった、内面的なアプローチも推奨されているのである。

さらに同誌では、占い師による「インナー子宮風水」も紹介されている。記事の冒頭では、子宮を「女性の体の中にある神秘的な〈桃色のお宮〉」に見立てて、体の内と外からいたわることの必要性が説かれている。また、風水に基づいて、部屋(に見立てた子宮)を整理することで、子宮をいたわる方法が紹介されてもいる。

このように、「子宮系」のムックは、子宮についての医学的な情報と、自分で行うメソッドとが並べられている点に特徴がある。「子宮系」メソッドは、子宮を直接的にケアするだけではない。自分にとってマイナスとなる生活習慣や考え方を改めることが、間接的に子宮をケアすることにつながると設定されている。

ここまでの記述からもお気づきかと思うが、こうしたメソッドはスピリチュアルと接続している。子宮を自力でケアすることが強調され、先鋭化するなかで、子宮が単純に「大切なもの」という位置づけに止まらず、「神秘的なもの」「聖なるもの」という性質を帯びていくのである。内面を磨くことが子宮のケアにつながるという考え方からも、そうした発想が見て取れる。

 

出産の可能性を保持し続けたい

ここで、「スピリチュアル」とは何かについて説明しておこう。「スピリチュアル」(spiritual)とは、精神や霊性を指す言葉であり、特に欧米において既成の宗教に批判的な立場をとる人々のなかで重視されるようになった。Not religion, but spiritual という言葉が、彼らのスタンスを典型的に示している。

他方で、「スピリチュアル」な運動や文化が学術的に検討される際には、「スピリチュアリティ」(spirituality)という概念を使用するのが一般的である。宗教学者の島薗進は「スピリチュアリティ」とは、「個々人が聖なるものを経験したり、聖なるものとの関りを生きたりすること」と定義している。女性が個人として、自分の内側にある子宮に「聖なるもの」を育もうとする「子宮系」は、まさに現代的なスピリチュアリティの現われと言えるだろう。

では、「子宮系」がなぜ注目されるようになったのだろうか。その背景を考えてみたい。

「子宮系」が出現した2000年代は、女性の社会進出が目立つようになった時期である。「子宮系」からは、そうした環境下での妊娠・出産を巡る厳しい状況が透けて見えてくる。

〔PHOTO〕iStock

働く女性にとって、日本はキャリアか出産かの決断を迫られる社会だ。仮に出産を経て職場に戻れたとしても、キャリアが継続できるとは限らない。そもそも、育児に対してパートナーがどこまで関わるのかも未知数だ。保育園をはじめ、行政における育児支援の仕組みも不十分である。女性が「普通に」働いて、「普通に」産むことは日本において極めて難しい。

しかし、だからといって、キャリアと出産どちらか一方の選択を決断するのは容易なことではない。両者の間で悩み、揺れ動く女性は、双方の可能性をなるべく保持し続けようと努めるだろう。

そんななか彼女たちが、「出産」の可能性を維持するために「今できることはないのだろうか」と考えることは想像に難くない。そこで、「子宮系」ムックが登場するのだ。医学的な知見は、年齢を重ねてからの出産を望む女性にとって重要な知識だ。

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