為替リスクは長い目で見れば怖くない
手堅く定期収入が得られる外債が魅力的だといえ、老後に為替リスクをとってもよいのか心配な人も多いでしょう。しかし、債券を満期まで持つ戦略なら、為替より利金の水準を気にするべきです。
また、公的年金は日本円での受給になるので、私的年金は米ドル建てにして、すべてを日本円で保有するリスクを軽減させる戦略もアリなのです。実際に日本人の富裕層で資産の多くを米ドル建てにしている人もいます。

知人のBさんはマイクロソフト社債30年もの(金利約4.5%)を10万米ドル(約1100万円)保有していて、税引き前で年間4500USドルの利息を得ています。利息を円換算すると、現在の水準である1ドル110円なら49万5000円ですが、もし円高が進み1ドル90円になれば40万5000円、1ドル80円なら36万円になってしまいます。これだけ見ると、たしかに為替によって日本円に換算すれば金額はぶれるわけですが、それでも36万円の収入があるのです。円預金で利息がほぼゼロと比べれば、定期的にお金が入ります。
また、債券を30年間保有すれば、利息総額は13万5000米ドル(1ドル110円なら約1485万円)と、投資金額よりも大きくなります。多くの人は2~3年などと短期的に投資を考えますが、人生100年時代です。
もっと長期的な視点を持って、為替レートに一喜一憂せずにおおらかにどっしりと構えるべきです。もちろん米ドルなど安定した通貨を選ぶ必要はありますが、為替リスクを恐れ過ぎて増やし損ねるリスクのほうが高いのです。
日本は金利を上げられない
海外投資を考えたほうがよいもう一つの理由に、すべての資産を日本円で持つことのリスク、を挙げることができます。国の財政はステージ4の末期癌レベルだからです。
平成30年度一般会計予算の歳出を見ると、実に3/4が借金返済、社会保障、地方交付税交付金に当てられており、削ることが難しい支出となっています。
また、毎年30~40兆円ずつ借金が増え続けています。現在、日銀の異次元緩和によって金利を低く抑えられており、約1000兆円ある公債の利払いは約9兆円で済んでいますが、徐々に金利が上がっていくと利払い負担が厳しくなります。
家計の金融資産は過去最高の1880兆円(2017年12月末)と、国内で国債が消費されている間は問題が表面化することはないでしょう。しかし、現在のペースで新しい国債を発行し続けていけば、20年後には国内で消化する余地がなくなります。海外投資家に国債を購入してもらうために金利を上げれば利払いが増え、真山仁の小説『オペレーションZ』(新潮社)のように、財政破綻をしてシンガポールに亡命という世も、物語だけの世界ではないかもしれません。
あと10年で日本のGDPは世界4位に
2042年までに世界経済の規模は倍増するという予測があります(Pwc調査レポート「2050年の世界」)。また、同調査によると、購買力平価のGDPは2030年までに中国が米国を抜いて1位、2位米国、3位インド、日本はインドに抜かれて4位、そして5位にインドネシアがつけると予測されています。
2位になるとはいえアメリカは相対的に国力を維持し続けるので、今後の30年間で大幅な円高ドル安になることは考えにくい。しかも、海外投資をすることによって、日本にいながらにして成長するアジア経済の恩恵を受けることができます。
少子高齢化で成長が見込めず、魚がいない海域で静かに沈みかけている日本という船に乗り続けるのか、ボートで抜け出して大量の魚が集まるアジア市場で切磋琢磨していくのか。
私は後者のほうが明るい未来を描けると思っています。退職金という大きな元手を得る定年退職後は、海外投資を始める上で絶好のチャンスです。
外貨建債券には、「価格変動」のリスクに加え、「為替変動」のリスクがあります。
購入単価が100を超えている場合、償還時に償還差損が発生します。
日本に居住している場合、税金の申告は各自が行う必要があります。
金融機関での要件や制度などは変わる可能性があります。
1米ドル=110円として計算。
当局に登録している金融業者かどうか必ず確認しましょう。