日本人の平均身長は、西郷どんの時代に一番縮んでたって知ってた?

酒席で絶対ウケるおもしろ雑学 牛編
齋藤 海仁 プロフィール

ウシの祖先は、ラスコー洞窟の壁画に描かれていた!

で、明治時代になって牛肉を食べ始めたのは富国強兵政策の一環だった。同時にこのとき日本のウシにとって極めて重要なイベントがスタートした。品種改良だ。

 

それまで役用だった日本のウシは、外国の肉牛や乳牛に比べるといかにも見劣りした。簡単に言えば小型貧乳、肉も牛乳も少なかったのだ。

そこで政府は外国種をどんどん導入して和牛と交配させた。結果、日本の肉牛の品種、いわゆる「和牛」として黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の四品種が確立される。

黒毛和種を代表する「前沢牛」。体重は700キロ前後。堂々たる体格だ。
 
日本の在来牛。現在は、鹿児島県の口之島牛と山口県の見島牛の2種類しか残っていない。上の黒毛和種と比べるとずいぶん小さい

ラッキーだったのは、古くから日本で飼われていた在来の役牛が霜降り肉の遺伝子を持っていたことである。これが世界でもな霜降り肉を作る黒毛和種誕生の引き金となった。現在、和牛では黒毛和種が大多数を占める。なお、松阪牛、前沢牛、神戸牛といった名称は黒毛和種の銘柄だ。地名は肥育した場所を示す。肥育とは子牛を成牛に育てる仕事で、繁殖までは手がけない。肥育と繁殖は違う技術である。ただし、前沢には繁殖農家もいて、繁殖と肥育が同じ地域で行われていることも前沢牛がすぐれている一因である。黒毛和種の銘柄は200以上あり、前沢牛のように品評会で上位に入賞するいわゆるブランド牛はごく一部に限られている、といった展示が郷土コーナーにあった。

ところで、みなさんは生きものとしてのウシと聞くと、どんな姿を思い浮かべるだろうか。たいていの人は北海道で放牧されているような白黒のウシを想像するのでは。これはホルスタインという種類で、巨乳のたとえにされるように乳牛。一方、前沢牛のような和牛の黒毛和種は肉牛だ。

という具合に、ひと口にウシといってもいろいろいる。けれど、「ウシの生物学」のコーナーにあったラスコー洞窟の展示を見ると、そんなイメージはすっかり覆される。

ラスコーの壁画に描かれているウシはオーロックスという原牛で、野生では1627年にポーランドで死んだ一頭を最後に絶滅してしまったが、これがすべての家畜ウシの祖先とのこと。つまり、今、世界に800いるという家畜ウシの種類は「品種」に過ぎず、生物学的にはまったく同じ「種」で、元をたどるとすべてオーロックスに至るのだという。

フランス、ラスコーの洞窟に描かれた家畜ウシの原牛・オーロックス。旧石器時代にクロマニヨン人によって描かれた

南仏ラスコーに壁画が描かれたのは旧石器時代の約1万5000年前。壁画の中では狩りの対象とされており、このときオーロックスはまだ家畜化されていなかった。オーロックスが人に飼われるようになったのは約8000年前だ。

以来、ユーラシア大陸が原産のオーロックスは世界中に行き渡り、今では約14億頭ものウシが地球上で飼われていることは先に書いたとおり。

オーロックスというひとつの「種」から出発して、人類の友として大発展を遂げたウシ。他にも似たような動物はたくさんいるのに、なぜウシだけが大規模に飼われるようになったのか。展示を追ってゆくと、その謎が徐々に解き明かされる。これがまた実に興味深い。