日本人の身長には、なんと牛が大きくかかわっていた!

日本人の平均身長は、西郷どんの時代に一番縮んでたって知ってた?

酒席で絶対ウケるおもしろ雑学 牛編

講談社のモットーは「おもしろくて、ためになる」ですが、このページでは、「おもしろいけど、ためになるかどうかはわからない」知識を紹介していきます。これを知ったからといって、何か得をするということはないと思いますが、酒席や家族との団らんの場で「へえー」をたくさんもらえることは請け合いです。
                                   ネタ元は、上野のお山に鎮座する東京国立博物館からコレクションを自慢げに展示した個人博物館まで、日本全国に5000館を超えるといわれる博物館です。ナビゲーターは、東京工業大学大学院で「人生の何の役にも立たないウニ、ホヤ、ヒトデを研究し」(作家・椎名誠さん談)、「おもしろがリスト」としてメディアの注目を集めるサイエンスライターの齋藤海仁さん。
                                   第1回は、日本代表するブランド牛「前沢牛」の地元奥州市にある「牛の博物館」で見つけた衝撃のおもしろネタを紹介します。なんと日本人は1200年もかけて縮んでいたらしい……。

日本人がどんどん縮んでいった理由は肉食禁止!?

「西の松坂、東の前沢」といわれるブランド和牛の前沢牛。牛の博物館は、その産地である旧前沢町(現奥州市)が平成7(1995)年につくった博物館だ。牛の専門博物館としては世界で唯一。展示はウシの生物学、人文科学、郷土コーナーの3つに分かれており、前沢牛に恥じない予算をかけただけあって、見ごたえのありそうなニオイがぷんぷんする。

 

世界で飼われるウシは14億頭にのぼるという。大型哺乳類では人類に次ぐ多さだ。世界の人口はいま70億人強だから、1人で1頭。一家に1頭ってわけだ。

これほどウシが増えたのは、家畜としてすぐれているからに他ならない。おかげで、インドのヒンズー教のように、信仰や崇拝の対象にしたり、特別な価値を見出したりする土地も少なくない。博物館の見学順路にしたがえば、まずウシの生物学からだけど、先に日本人とウシとの関わりについて紹介しよう。

日本におけるウシ文化の特徴といえば、ずっと牛肉を食べなかったことが挙げられるだろう。

日本でウシが飼われるようになったのは、大陸から渡来人が運んできて以降である。だが、おそらく仏教思想の影響により、675年に天武天皇が肉食禁止令を出したため、明治時代まで日本で一般に牛肉が食べられることはなかった。ウシはもっぱら役用で、をひかせて畑を耕したり、荷物を運ばせたりしていた。

ちなみに、国立科学博物館などのデータによれば、日本人の平均身長は古墳時代をピークに下降線をたどり、江戸末期前後の成人男性で155センチと最低を記録する。ということは、西郷隆盛や坂本龍馬が活躍した時代の日本人は、紫式部や清少納言の頃、源平合戦の頃、信長、秀吉、家康の頃に比べて、もっとも背が低かったわけだ。

長州藩出身でイギリス留学の経験もある明治の元勲の一人・井上馨。身長は150センチに満たなかったらしい
坂本龍馬は5尺8寸(176センチ)あったとも言われている。現在の平均身長からいえば、190センチ近い。土佐名物、鯨や鰹でしこたま動物性タンパクを摂っていたからか
幕末に撮影された、幕府の公用便を運ぶ継飛脚。頑健な者が就く職業だが、ずいぶん小柄だ(photo by gettyimages)

身長が低くなっていったのは、一人ひとりの栄養状態が悪くなったからだという。なかでも重要なのはタンパク質であり、これには肉食禁止文化が少なからず影響していると言われている。

ちょっと待てよ。すると、焼肉のルーツであるお隣の朝鮮半島はどうだったのか。仏教も朝鮮半島から伝わったんじゃなかったっけ。と、ふと疑問に思って調べてみたら、意外なことが明らかに。

『よくわかる焼肉・韓国料理の歴史』(鄭大聲/チョン・デソン、旭屋出版)には、仏教の普及により朝鮮半島でもいったん肉食が禁止されたものの、13世紀にモンゴル帝国に侵略されて復活。14世紀末に儒教国家の朝鮮が成立してからは肉料理がしっかり根付いたとある。

一方の日本では、モンゴルの軍勢は九州の玄界灘沿岸で撃退され、彼らの食肉の風習が入ってくることはなかった。

朝鮮半島でも役畜のウシは滅多に庶民の口に入らなくても、ブタやニワトリは普通に食べていたらしい。ってことは、もし神風が吹かず日本が元寇で勝っていなかったら、ボクもアナタももっと背が高かったかもしれない。でもその前に、日本が征服されていた? それは勘弁だな……。ガラパゴスじゃないけれど、島国っていうのはやはり特殊な状況に陥りやすいということか。

なお、平成24(2012)年の日本人の成人男性の平均身長は167センチ(総務省統計局)だ。江戸末期との差は12センチ。実際に見比べてみると、これは大人と子どもぐらい違う。いったいどこで見比べたのかというと、日本橋の警察博物館だった。年代順に制服が並ぶ展示があって、明治初期のものはまるで子ども服のようだった(その後リニューアルしたので同じ展示はないかもしれない)。確かに、いまの平均身長155センチは小学校6年生ぐらいの数字だし。