# 飲食店経営

「いきなりステーキ」を成功させた「真似のできない飲食店」の仕組み

「社長のアイデア」と「母の教え」

前菜なしで、厚切りステーキにかぶりつく! しかも立ち食い!
 
そんな驚きの新業態で、2013年12月、外食チェーン業界に殴り込みをかけた「いきなり!ステーキ」。それから5年足らずの間に店舗数300店を超える快進撃を続けている。では、「いきなり!ステーキ」がこれほどまでに成功した理由はどこにあるのだろうか?

 
自らが飲食店経営に手を出し、失敗したことがある漫画家で小説家の折原みとさん。「飲食店経営で成功するとはどういうことなのか?」をコンセプトに、「いきなり!ステーキ」をはじめとする飲食店経営をする「ペッパーフードサービス」の一瀬邦夫社長にインタビュー。前回は現在に至るまでに何度も訪れた危機をどう乗り越えたかをお伝えした。今回はこれだけ大きく展開できているその仕組みがどうやって作られたかに折原さんが迫る。
椅子を設置し、広い店にするために対面に移転した「いきなり!ステーキ」第一号店の銀座四丁目店。ランチタイムが終わっても人が並ぶ

原価率50%!?

「いきなり!ステーキ」の一番の魅力は、何といっても、美味しい厚切りのステーキをリーズナブルな価格で食べられること。どーんと300グラムの厚切りステーキが2000円前後。しかし、安いからと言って安物の肉を提供しているわけではない。肉のクオリティは、アメリカのCAB(アメリカ商務省による肉の格付け)のお墨付きだ。
 
通常、飲食店の食品原価率の相場は20~30%だが、この店の原価率はなんと50%程度、ステーキ単体でいえば55%ほどだという。お客にとってはお得だが、店側は利益が得られるのだろうか?

原価率の高いものを安く提供して利益を出すためには、相当大勢のお客さんに来てもらわなければならない。一口にそうは言っても、決して簡単にできることではないだろう。それは、元料理人である一瀬邦夫社長が積み上げてきたノウハウと、豊富なアイデアがあればこそ実現できたことだ。
 
前回の記事にも書いたように、一瀬社長は高校卒業後に町の洋食屋に修行に入り、28歳でコックとして独立。「キッチンくに」という小さなレストランから一代で今の会社を築き上げた人だ。その長年の経験と人脈によって、「いきなり!ステーキ」では、上質の肉を安定して仕入れることができる。ブロック肉を注文量に応じてお客の前でオーダーカットするため、仕込みが要らないのも効率的だ。
 
そして、食品原価率が高い分、人件費を抑えるための様々な工夫と技術革新を実践しているが、これらは、1994年に「ペッパーランチ」のチェーン展開を始めた時点で、すでに確立していたという。そのルーツは、さらに以前、「キッチンくに」の時代に遡る。

「コックレス」システムを作るために

 「キッチンくに」が4店舗に拡大した1990年頃、店は慢性的な人材不足に悩まされていた。そこで考えたのが「コックレス」という仕組みだ。ステーキの店を広げることは社長の夢だったが、コックが育たないと店を増やすことができない。そこで、コックを必要としないシステムを作ろうと考えた。
 
そんな時に出会ったのが、特殊な構造によって保温性を高めた鉄皿だ。この鉄皿をあらかじめ過熱しておけば、あとは肉を載せるだけで焼くことが可能になる。早速店で試してみたところ、美味しいステーキができあがった。しかも、この調理法なら、コックではなくアルバイトでも作業は簡単。これはいける‼
 
ただし、鉄皿を加熱する熱源は改良する必要があった。ガス火で鉄皿を加熱すると、保温の260度にするまでに約7分かかる。いくつもの火口を全開にして皿を加熱していると、厨房の中が大変な暑さになってしまうからだ。