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「日本の不動産市場はバブルだ」には、まったく根拠がなかった

世界と比較すれば一目瞭然
3年連続で公示地価が上昇するなど好調ぶりが伝えられる日本の不動産市場。だがその一方で、現在の地価上昇は実際の価値を反映していない不動産バブルであり、「五輪後の暴落は避けられない」などと警戒する声も一部に根強い。

はたして、日本の不動産はいま現実にはどのような状況にあり、投資家は何を真に警戒すべきなのか。不動産コンサルタントにして、日本初の個人向け不動産コンサルタント会社「さくら事務所」の会長でもある長嶋修氏に聞いた。

銀座の一等地はバブル期より高騰

日本の不動産市場はいま、どのような状況にあるのか、について、正しく見ている人は案外少ないと思います。

よく聞かれるのが「日本の土地はバブル状態だ」や「2020年の東京五輪後には暴落する」といった見方です。断言しましょう。こうした見方は、誤りです。

正しく冷静に、いまの日本の不動産市場を見るための話をしたいと思います。

 

国土交通省は毎年、土地取引の指標である公示地価を公表していますが、今年3月に公表された最新の公示地価(2018年1月1日時点)は3年連続で上昇となり、下落地点も減少していました。

こうしたニュースを通じて、日本の不動産投資市場についてポジティブなイメージを持っている方は多いかと思います。ただ、日本の地価が上昇しているといっても、その内実を細かく見ると凄まじいほどの地域格差が存在するのです。

商業地で言うと、地価が日本で一番高いことで知られる銀座5丁目の文具店「鳩居堂」前の土地は、バブル直後の1990年には1平米あたり3850万円でした。その土地が今や5550万円/㎡ですから、バブル期よりはるかに高値がついています。

一方で大阪や名古屋の商業地はどうかというと、大阪が90年の時点で3500万円/㎡だったのが、今年は1850万円/㎡、名古屋は2800万円/㎡だったのが1188万円と、依然バブル期の半分も戻っていません。

一口に「地価が上がっている」と言っても、それは東京にマネーが一極集中した結果なのです。

住宅地に関しては、去年の地価公示で下落率が全国ワーストだったのは、千葉県柏市にある「柏ビレジ」というバス便の住宅地でした。

ここは東急不動産が1980年に開発・分譲した典型的なベッドタウンで、開発時のコンセプトは「大企業に勤める課長が住む家」でした。その戦略が見事にハマって30代後半から40代中盤くらいの大企業の部課長クラスがここに家を買い求め、全盛期には彼らとその家族を中心に約1600世帯が集まっていました。

ところが分譲から38年が経ち、購入者たちが70~80代になって駅前のマンションや都心部に移る、子供と同居する、介護施設に入るなど様々な理由で住宅を手放し始めているのですが、これが思うように売れていません。駅から遠くバスに乗らないといけない立地では、いまや住みたがる人がなかなかいないからです。

ただ、柏市全域がダメなのかというと決してそんなことはありません。JR柏駅から徒歩25分圏内の中古マンションの価格は、東日本大震災直後の(放射能汚染の風評被害に見舞われた)一時期を除けばずっと上がり続けていますし、柏駅周辺の地価は全体的に上昇しています【グラフ①】。

【グラフ①】

この「駅前、駅近」に極端に人気が集まる現象は、郊外のベッドタウンに限ったものではなく、東京都心でも全く同じです。

中古マンションの価格は5年前、2013年頃であれば駅から徒歩1分遠くなるごとに8000円/㎡下がると言われていました。ところがそれが今年5月には、徒歩1分離れるごとに約1万8,000円/㎡下がる構図になっています。

つまり、「東京か、それ以外か」で極端な地価の二極化が起きているのに加えて、「駅から近いか、遠いか」でも極端な格差が生じるもうひとつの二極化現象が、都心、郊外、地方などの区分と関係なく、日本中で起きているということなのです