# 賃金

史上最高の企業利益なのに思ったほど賃金が上がらない日本経済の罠

パート賃金だけ25年で2割増の怪
竹中 正治 プロフィール

なさけない安定にしがみつく?

この点については、昨年5月に厚生労働省が「透明かつ公平な労働紛争解決システム等のあり方に関する検討会」の最終報告を公表している。

しかし解雇の金銭解決ルールの制定が必要だとする主張と、そうしたルールはむしろ金銭的代償で解雇を助長するという労働組合やその利害を代表する論者との間で鋭い意見対立を起こしている。

この労働法制の問題は、金融系エコノミストである筆者の専門ではないので深入りはしないが、日本の企業が陥っている正規雇用労働者の賃金の上方硬直性の罠から抜け出さないと、デフレは終わっても、低インフレ状態から抜け出せない。

その結果、米国の様に量的金融緩和を終了し、金利を引き上げることができない。すなわち次の景気後退に直面した時に金融緩和政策を働かすことができない。

 

今日の様にイノベーションの速い時代は、それに伴って産業構造や職種の分布も変化する必要があり、労働力の柔軟な移動(労働市場の流動化)が欠かせない。労働者の権利保護と労働市場の流動化のバランスをとった「透明かつ公平な」解雇ルールの制定が求められているのだと思う。

もっとも「賃金は上がらなくても良いので、定年までずっとこの企業に居させてください」というのが現在の日本の正規雇用層多数派の期待・願望であるならば、正規雇用に見られる賃金の上方硬直性は、そうした多数派の期待の自己実現した結果だと言うこともできようか。

もしそうだとすると、なんとも、なさけない感じである。