大杉漣、西城秀樹の友人たちが「いまになって思うこと」

喪って改めてその大きさに気づいた
週刊現代 プロフィール

正直に生きることの難しさを知りました/佐野史郎(俳優)

野際陽子 享年81'17年6月13日没(肺腺がん)

野際陽子という人を想い返すと、月並みな言い方になってしまいますが賢い人だったと思います。彼女がNHKのアナウンサー出身だということを知っているから、そういう先入観があるのかもしれませんが、とても観察眼の鋭い方で人をよく見ている。

相手の話をよく聞くし、気配りも欠かさない。自分がその場を仕切るというよりは、一歩下がって常に全体を見渡しているような印象です。

撮影現場では、誰とでもオープンな付き合いをしてらっしゃいました。『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)で共演した頃は、(元夫の)千葉真一さんのこととか、プライベートの話もしていらっしゃいました。高校生の娘(真瀬樹里)さんも連れてきていましたよ。

キチンとした母親や、しっかりした女性を演じることが多かったですが、素顔は飾らない人でした。無防備なところもありました。それだけ現場の人たちと信頼し合って、仕事をしていました。

僕は、当時の野際さんの年齢を越えましたが、ドラマという一座の中で若い人を引っ張らなければならない責任の重さを感じます。

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いまになって思うのは、野際さんのような裏表のない正直な人がいたから、若い人も安心して心の底から仕事に打ち込むことができたのかな、ということです。

また、絶対に人の悪口を言わない人でもありました。現場ではトラブルがつきもの。

そんな時でも、誰かのせいにするのではなく「奇妙なことよね」という感じで受け止めるのです。そのトラブルをむしろ楽しんでいたくらい。野際さんがそういう感じだからか、ピリピリした現場は一つもありませんでした。

自分が年長で現場にいる時、果たしてそれができているかどうか。野際さんの大きさを感じるばかりです。

最後にお話ししたのは、亡くなる3ヵ月ほど前。『ダブル・キッチン』(TBS系)というドラマで共演した山口智子さんと、坂井真紀さんと4人で食事をしました。

その頃、幕末や東京裁判にまつわるドラマを控えていたこともあり、戦争の話になりました。疎開もされていた方なので、戦争の愚かさをたびたび語っていらしたのが印象的です。

ご自身の歴史観も話してくださいましたし、それだけの知識や哲学も持っていらっしゃいました。それでいて、政治の話をしたかと思えば、急に下ネタを言ったりもするんです。清濁を分け隔てずに捉えていらっしゃったのを覚えています。

 

初めて共演させていただいたのは30年くらい前ですが、これだけ長くお付き合いできたのも、なんでも腹を割って話してくれたからです。僕も、誰にでも心を開いて正直な人でありたいですね。それが、野際さんから学んだことですから。

ですが、正直でいることの難しさが世の中に渦巻いている空気を感じます。本音でぶつかりあうと憎悪が生まれてくることも多いように感じます。

野際さんが亡くなってから、あんな人が当たり前にいると考えてはいけないし、稀有な方だったんだなと、思い知るばかりです。