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甲子園…あの夏のヒーローたちはまだ野球を続けているだろうか

佐賀北・副島 「サヨナラボーク」ほか

あれからずいぶん時が流れたけれど、君はいまも元気にしているだろうか。青春の季節を終えた元球児の現在を追った。

値千金のミラクル逆転弾

「あり得る最も可能性の小さい、そんなシーンが現実です!」

NHKの実況アナウンサーをこう絶叫させたのが、'07年の夏の甲子園第89回大会決勝、広陵(広島)対佐賀北の試合で放たれた「逆転満塁弾」だ。

大会屈指の好投手、広陵の野村祐輔(現広島)に封じられ、0-4と劣勢に立たされていた佐賀北打線は8回裏、連打とフォアボールでようやく1点を返す。なおも1アウト、満塁。ここで打席に立ったのが、3番の副島浩史だった。

野村が投じた3球目のスライダー。副島が思い切り踏み込んで振り抜いた打球は、大きな弧を描いてレフトスタンドに飛び込んだ。まさに値千金の一発だった。
29歳になった副島が当時を振り返る。

「一塁を回るまで全力疾走していましたが、レフトがボールを見送ってからの記憶が真っ白なんです。どんなガッツポーズをしていたかも映像を見るまでわからなかった」

副島は、高校を卒業後に福岡大学へと進学。3年秋には九州六大学リーグの本塁打王と打点王に輝くなど活躍したが、社会人野球チームからのオファーを断り、地元の佐賀銀行に就職した。

「地元に残って、あれだけ応援してもらった恩返しがしたいという気持ちがあったんです。銀行での営業の仕事は新鮮で、毎日が楽しかった」

 

野球から離れ、充実した日々を送っていたある日、副島は佐賀北のチ
ームメイトだった久保貴大(現佐賀北監督)が高校野球の指導者を目指していることをニュースで知る。

「教員を目指し、自分の経験を次の世代に伝える彼の生き方が、すごくかっこよく見えた」

久保の生き方に刺激を受けた副島は、'14年に佐賀銀行を退職。県内の中原特別支援学校に勤めながら、教員採用試験に向けて勉強に励んだ。そして、昨年の秋、4度目の挑戦でついに合格。この春から、県立唐津工業の野球部副部長を務めている。

「生徒たちの練習に交じって、バッティングやキャッチボールを一緒にするので、いまは毎日ヘトヘトです(笑)。野村をはじめ、同世代がヒーローインタビューを受けているのを見ると嬉しくなります。

でも、『大学でもっと頑張っていれば、もしかしたら自分も……』と、ふと思う時がある。だからこそ、生徒には『やってやろう、プロを目指そう』という闘志を授けたいと思っています」