自閉症の子を持つ大学教授が相模原事件・植松被告に尋ねた一つのこと

「あなたの父親が心失者になったら…」
佐々木 隆志 プロフィール

被告手記の出版中止を求めた理由

私は、障害児を持つ親として、社会福祉専門職員を養成する教育者として、また、社会福祉の研究者として、植松被告の偏見が広まる恐れがあり危険だと感じたため署名活動を行った(「静岡新聞」、2018年6月5日、1面)。

署名活動は2018年6月8日より6月15日まで静岡駅前で実施した。出版阻止の理由は以下の3点にある。

①植松被告の手記出版が障害者のさらなる不安増大につながる。

前述したように「植松」の言葉で心身が害される方が相当数いるし、事件から2年しか経過しておらず、7月お盆の時期の刊行は、命を失った方にとっても二重の痛みである。

②植松被告の手記出版が新たな事件に発展する危険性がある。

事件後も、施設を攻撃する電話が神奈川県や静岡県、他県でもあり、第二の相模原事件が起きるのではないか、夜勤の職員らは不安に陥っている。

③子どもや障害者らを取り巻く環境が悪化する。

児童、障害者、高齢者などに適切な環境を与え、安心できる生活を保障してあげることが社会の責務であると多くの関係法律で述べられている。

例えば児童福祉法第2条では、「児童育成の責任」について、「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と記されてある。

つまり、社会全体で適切な環境を整えてあげる責任がある。

 

殺人者の手記は、健全育成の視点から有害図書で、殺人者の偏見を子どもたちにとって危険であり、子どもにみせられない。植松被告の「麻薬の解放」などの危険な思い込みはその一例である。

一部意見では、「読者が判断すればいい」「オープンにした議論を」がある。しかし、特定の雑誌や専門書と異なり、書籍の刊行は不特定多数の方々の眼に触れる機会があることを忘れないで欲しい。

保育士・幼稚園教諭養成の立場から、幼児の眼に触れさせたくない書物は数多い。大人がそれを峻別しなければ、気が付いた時は子どもが犯罪に巻き込まれ、命が奪われることになる。

いつもそのような事件を見るたびに、子どもにとっての成長環境が汚染されていることに心が痛む。