ドナルド・トランプ米大統領を巡る「ロシアゲート」(2016年の米大統領選で起きたサイバー攻撃などの不正な選挙干渉で、当時のロシア政府関係者とトランプ陣営が共謀したとされる疑惑)に関して、米メディアがヒートアップしている。
ポール・マナフォート元選挙対策本部長は8月21日、バージニア州連邦地裁で有罪の評決を受けた。そして米紙ニューヨーク・タイムズは「ロバート・モラー特別検査官にとって大きな勝利」と大々的に報じた。
しかしその詳細をつぶさにチェックすれば分かることだが、マナフォート被告は2006年から2015年にかけて当時は親ロシアのウクライナ前政権からロビー活動に対する巨額な報酬を受けながら適切な税務申告を怠っていたなど18件の罪で起訴されたが、陪審はこのうち8件について有罪と評決したのである。
その中には個人の財政に関わる脱税や銀行詐欺罪などが含まれている。ところが、それらのほとんどがトランプ選対本部長に就任する前の出来事であり、トランプ大統領自身と直接なんら関係がない。
マナフォート被告の有罪はもちろん、トランプ大統領にとってマイナスこそあれプラスになるはずがない。だが、法的にも政治的にも影響は限定的である。具体的には共和、民主党支持を問わず、多くの有権者はこれを理解しており、この一件でトランプ支持、不支持が大きく変わるものではない。
もう一つ、トランプ大統領に関わる問題がある。同大統領の不倫疑惑モミ消しを担当した元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が司法省から起訴・ニューヨーク連邦地裁から訴追された幾つかの容疑のうちの元ポルノ女優の女性2人に対する口止め料28万ドル(約3100万円)を肩代わりした不法献金の罪である。
同氏は司法取引をした上で、この支払いはトランプ氏から直接指示があったと法廷で証言している。トランプ氏はもちろん、直ちにツイッターでコーエン氏を「嘘つき」と断じて、そのような指示は出していないと否定した。
この元ポルノ女優への口止め疑惑はロシアゲートとは異なり、政治の本質と全く関わりがない。だが、トランプ氏(政権)への厳しい報道スタンスを採るメディアの中でも、特にCNNテレビは、コーエン氏が口止め料支払いの指示を受けたと法廷で証言したことをトップニュースで扱い、次いでマナフォート被告の有罪評決を2番目の重大ニュースとして報じている。
同局は夜8時から11時までのゴールデンタイムで特別番組を組んで大々的に取り上げている。その特番でコメンテーターの一人は「これで終にトランプも終わった!」と高々に宣言したほどだ。