TPPもFTAも、日本の「真の開国」を阻む閉鎖的クラブにすぎない

「自由貿易」を正しく理解してますか?
野口 悠紀雄 プロフィール

FTA、EPAとは

第二次大戦前のブロック化が世界大戦の一因となったという反省から、1947年にガ
ット(関税及び貿易に関する一般協定)が作成され、ガット体制が48年に発足しました(日本は55年に加盟)。

これは、貿易における無差別原則を基本的なルールとして規定したもので、多角的貿易体制の基礎を築き、世界経済の成長に貢献してきました。これは、前の分類で言えばCに相当します。

ガットは暫定的な組織として運営されてきました。しかし、強固な基盤をもつ国際機関
を設立する必要性が認識されるようになり、94年のウルグアイ・ラウンド交渉の妥結の際に、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)の設立が合意されました。

ところが、ドーハ・ラウンドは、各国の利害の調整ができなかったために、頓挫しました。こうして、FTA、つまり仲良しクラブ(B)が増えるようになりました。

FTAが増えたのは、比較的最近のことです。90年以前にはわずか16件しかなかったも
のが、90年代に50件増加し、2000年以降150件を超えるFTAが新たに発効しました。現在、世界には300近くのFTAが存在しています。

FTAは、新興国の工業化と密接な関係があります。右に述べたEU、EFTA、NAFTAでは先進工業国が中心になっていますが、一般的には新興国(新興国と先進国、あるいは新興国同士)の関わるものが大部分を占めています。

なお、FTAと似たものとして、EPA(経済連携協定)があります。これは、関税撤廃
だけでなく、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策などの幅広い分野での連携です。

 

TPPの経済的効果はほとんどない

TPPは2016年2月4日に署名されましたが、アメリカのドナルド・トランプ大統領が、就任直後に離脱の大統領令に署名しました。

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TPPに関しては、「最大の成長戦略である」とか、「デフレからの完全脱却を目指す日本にとって欠かせない課題」などという意見が見られます。しかし、仮にアメリカ離脱がなかったとしても、経済に大きな影響を与えるような効果は持ちえないものです。

コメについては、日本は、1キロ341円というきわめて高率の関税を課しています。仮にこれを撤廃または削減するなら、日本の消費者にとっては大きな福音でしょう。しかし、TPPでコメの関税率を維持することは、最初から決まっていました。

他方、アメリカが自動車に課している関税(乗用車2・5%、トラック25%、部品は大半が2・5%)については、どれだけを即時撤廃するかが問題とされました。これについては、部品の8割超の品目について即時撤廃し、全品目については、10年超の長期間かけて撤廃となるとされていました。

部品の関税撤廃は、日本の輸出を増やす可能性があります。ただし、現在すでに、部品も含めて自動車の現地生産が主流となっています。こうした中では、関税率を引き下げたからと言って、輸出が大幅に増加することは考えにくいのです。

以上のように、コメの輸入枠拡大と自動車の関税撤廃は、ともに日米経済にそれほど大きな影響を持ちえないものでした。

では、全体としての効果はどうでしょうか?

内閣府が11年10月に試算したところでは、TPP参加によるGDP押し上げ効果は、10年間で0・5%(2・7兆円)程度です。年平均でいえば、2700億円程度。つまり、「ほとんど効果がない」といってよい規模です。

こうなるのは、GDPでみれば、TPP参加国のうち日本とアメリカでほとんどのウエイトを占め、両国間では(農産物等を除けば)関税障壁はすでにかなり低くなっているからです。

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