TPPもFTAも、日本の「真の開国」を阻む閉鎖的クラブにすぎない

「自由貿易」を正しく理解してますか?
野口 悠紀雄 プロフィール

ブロック経済化が第二次世界大戦をもたらした

関税同盟は、歴史的にはハンザ同盟の頃に遡ります。これは、中世の末期に、北ドイツの北海・バルト海沿岸にあるリューベックやハンブルクが中心となって形成した同盟体です。13世紀から16世紀ごろにかけて、北欧の貿易や商業を支配しました。

また、第一次大戦と第二次大戦の戦間期には、ブロック経済化が進展しました。

1932年、イギリスは、それまでの自由貿易主義を破棄し、保護関税による国内産業
の保護と国内市場の拡大政策に転じました。さらに、自治領とイギリス連邦を形成し、スターリング・ポンドというイギリスの法定貨幣を基軸通貨とする経済圏である「スターリング・ブロック」を推し進めました。

これを契機として、ブロック経済化が世界中に広がったのです。ブロック内部では互い
に利益を享受し、外部に対しては関税障壁によって輸入を排除しようとしました。

スターリング・ブロックから締め出された日本は、満州や台湾に進出し、「大東亜共栄圏」を形成しようとしました。ドイツは、東南ヨーロッパと南米とで経済圏を確立しようとしました。フランスやオランダも、独自の経済ブロック形成をめざしました。こうした排他的なブロック化の動きが、第二次世界大戦を引き起こす大きな原因になったのです。

もちろん、この当時と現在とでは、さまざまな経済的条件が大きく変わっています。しかし、「ブロック化が危険な結果をもたらし得る」という点は、われわれが忘れてはならない教訓です。

 

EU、EFTA、NAFTA

第二次大戦後、地域統合化が進められました。欧州では、1952年に欧州石炭鉄鋼共
同体(ECSC)が設立され、57年に欧州経済共同体(EEC)が発足しました。これらが
67年に欧州共同体(EC)に移行し、93年に欧州連合(EU)が発足しました。

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これに対して、イギリスが中心となって60年に欧州自由貿易連合(EFTA)が設立さ
れ、EECの枠外にあった諸国が加盟しました。

また、アメリカ、カナダ、メキシコの3国で、北米自由貿易協定(NAFTA)が94年に
発効し、北米産品の大部分の関税を発効後直ちに撤廃しました。その後、残る品目の関税も段階的に撤廃され、現在、北米の貿易はほぼ関税ゼロで取り引きされています。

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