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TPPもFTAも、日本の「真の開国」を阻む閉鎖的クラブにすぎない

「自由貿易」を正しく理解してますか?
米中貿易摩擦やアメリカのTPP離脱など貿易をめぐる衝突が続くなか、『世界経済入門』の著者・野口悠紀雄氏は、FTAやTPPが自由貿易と混同して語られることに警鐘を鳴らします。本書より、「自由貿易とは何か」を基本から徹底的に解説した第3章の一部を掲載します。

「仲良しクラブ」は望ましいのか

国の世界に対する態度として、つぎの3つを区別しましょう。

A:引きこもり主義(可能な限り鎖国政策をとる)

B:「仲良しクラブ」の結成(FTA、EPA、EUなどの地域統合)

C:すべての国と分け隔てなく付き合う(自由貿易主義)

Bの「仲良しクラブ」とは、メンバーが限定された集まりです。具体的には、これから
述べるFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定。TPP〈環太平洋パートナーシップ協定〉など)といったものが該当します。

また、EUのような巨大な地域統合もこのカテゴリーに属します。クラブのメンバーの交流を盛んにするためにさまざまな措置を取ります。ただし、クラブの外との関係はこれまでどおりです。だからこれは、Aを一国から数ヵ国の集まりに拡大したものだと解釈することができます。

問題は、Bが望ましい方向かどうかです。日本の多くの人は、「仲良しクラブの約束を
受け入れないのは、引きこもり主義だから、望ましくない」と考えています。しかし、「世界に開かれた国」とは、本当はCの方向を取る国です。

もちろん、Cの実現は簡単ではありません。では、「BはAよりはCに近いからよい」
と言えるでしょうか。これは、「関税同盟の理論」として経済学で古くから議論されてきたテーマです。その結論は、「Aより悪くなることもある」というものです。

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なぜなら、クラブの外の国との関係を緊密化すべき場合、クラブに入っているためにそれが阻害されることがあるからです。

もっとも、日本でBがよいと考えられているのは、「Cに近いから」というよりは、「人口や経済規模などが大きいほど強いから」という考えに基づくのでしょう。「大きいものは強い。アメリカは大きい。欧州も統合すれば強くなる」という発想です。

軍事的には、確かに大きいほうが強いでしょう。その考えを経済問題にも拡張しようとしているのでしょう。

しかし、経済的に重要なのは、クラブの仲間だけと付き合うことではなく、さまざまな国との関係を緊密にすることです。とくに、資本や労働力の流入に対してオープンな姿勢をとることです。これらは仲良しクラブの外から来ることも多いので、むしろクラブに入っていないほうがよい場合も多いのです。

仲良しクラブは、EUの場合に典型的に見られるように、巨大化した組織を運営するた
めに必然的に巨大な官僚システムを生みます。この支配を受けたくないと考えるのは、当然です。

 

FTAやTPPは、貿易自由化協定でなくブロック化協定

Bで中心となるのは、FTAやTPPといった地域協定です。

FTAとは、参加国が関税や輸入割り当てを撤廃したり削減したりする協定です。

TPPは、環太平洋地域の国々による経済連携協定(EPA)です。

FTAやTPPは貿易自由化の協定であると考えられています。しかし、これは大きな
誤解です。

これらは、自由化ではなく、自由貿易の原則に反するブロック化協定です。その点
で、先ほど挙げた分類では、CではなくBに該当します。FTAやTPPは、経済学では「関税同盟」と呼ばれます。

経済圏やブロック化協定、関税同盟は、自由貿易と混同されています。いくつかの国で
集まって、その域内では関税を引き下げ、または撤廃しようとするものだからです。

FTAやTPPを評価するにあたって、自由貿易との区別が最も重要な点です。

こうした協定が協定加盟国間の貿易を促進することは、言うまでもありません。しか
し、関税同盟は、域外諸国との間に関税障壁を設けています。したがって、それまであった域外国との貿易を縮小させるという効果も持っています。

TPPの場合には、中国が除外されるため、中国との貿易が縮小するという可能性
が、日本経済にとって大きな問題となるのです。