警察庁長官狙撃事件の真犯人を支援した「協力者」からの手紙

未解決事件の真相が、いま明らかになる
原 雄一 プロフィール

揺れ動く被疑者・中村の供述

平成22年2月、私は取調べの過程で、中村泰から「エージェントDこと小川雅弘」に関して具体的な供述を引き出した。このときの中村は、いつになく興奮状態になっていた。「いずれ小川も取り調べることになる」と私が告げると、

「関わりたくないのであれば否定すればよい。誇りに思うのならば話せばよい。小川個人の判断に任せる。小川が話したことをあえて否定するつもりはない」

などと語気を荒げた。

その後、取調べが続くにつれ、中村の気持ちは揺れ動いた。たとえば、2月24日午後の取調べでは、

「名古屋市西区のUFJ銀行で現金輸送車を襲う計画を立てた際、小川から止められたが、老いていく焦りから実行してしまった」

などと打ち明けたうえ、捜査段階でも裁判過程でもこれまで一貫して否認してきた三井住友銀行都島支店の現金輸送車襲撃事件について、「私が実行したことを認めます」とあっさり認めるありさまだった。

この心境の変化は何なのか。さらには、

「小川は狙撃現場界隈の荒川区に土地鑑があった」

「報酬を弾むから仲間に入ってくれと頼まれ、バイト感覚で狙撃を手伝ったと小川に話を創られたら困る」

「捜査側に小川のことを認めるべきではなかった。小川は思想よりも現金や商売が大切な人物だ」

「フランスからの絵葉書は、長官狙撃事件に自分を引っ張り込まないで欲しいという小川からのメッセージだと思う」

「小川は、拳銃について、サイドアームにしかすぎない。威力も射程も大したことはないと馬鹿にしていた」

など、一貫性のない話をしては、ため息をつく状態になった。

やはり共犯なのか

翌25日になると、中村の心理状態はさらに不安定となった。私が、「長官狙撃の支援者は小川だな」と執拗に問い質すと、中村は何も答えられずに黙ってしまった。そして、「どうなんだ、違うのか」と念押しすると、

「答弁を留保します」

と逃げた。そして、

「捜査側からすると、小川は支援者の条件に合いすぎるから捨てきれないと思うが、この人物は有害な要因を含んでいる。放置しておいたほうがよい」

「新聞が大々的に時効の報道をしたら、それに便乗して、小川は自分の主張を公表することを考えているかもしれない。ただ単に『私は狙撃事件に関係していない』と言ってくれるなら想定の範囲内だが」

「私が小川と一緒に行動したことを公式に認めるわけにはいかない。過激派の人間が仲間のことを話さないのと同じだ。公安事件では当たり前のことだ」

などと、狙撃事件を義挙として表明したものの、小川から難癖を付けられ、台無しにされることに中村は不安と焦りを感じていた。

取調べ過程では、終始、冷静・沈着をモットーとしてきた中村だったが、公訴時効が差し迫った時期になり、私たち捜査班に小川を割り出され、その共犯性を追及されると供述は不自然に変遷した。

最終的に中村は、時効間際の取調べで、

「小川に関わっても何の利益もない。小川は長官狙撃事件に関係していない」

と言い張った。私は、妙な違和感を覚えていた。