2004年に別の容疑で逮捕された後、大阪府警に移送される中村泰(写真提供:読売新聞)

警察庁長官狙撃事件の真犯人を支援した「協力者」からの手紙

未解決事件の真相が、いま明らかになる

日本警察史上最大の屈辱――平成7年3月30日、國松孝次警察庁長官狙撃事件。

南千住署におかれた特捜本部は、オウム真理教による犯行の可能性が高いと見て捜査を続けたが、真相究明に結びつく情報は一向に得られなかった。一方、警視庁捜査第一課の原雄一刑事は、警察組織に激しい憎悪の感情を持つ老テロリスト・中村泰の存在に注目。執拗な取調べによって、長官狙撃の自供を引き出した。

真犯人しか知りえない詳細な供述に、事件はついに解決かと思われたが、警視庁公安部長は原氏の前で驚くべき発言をする。「立件を目指す捜査をされると困るんだ」──。

それでも、原氏を中心に刑事部・公安部から集められた「中村捜査班」は着々と供述の裏付け捜査を重ねていった。原氏は警視庁退職後も執念の捜査をつづけ、ついに中村の5人の協力者(=エージェント)を割り出した。

〈エージェントA 北米での活動を支援したメキシコ人女性〉

〈エージェントB パスポート入手を支援した男〉

〈エージェントC 韓国の情報機関との橋渡しをした男〉

〈エージェントD 名古屋、三重での犯行を支援した男〉

〈エージェントE アメリカ・ロサンゼルス在住の輸入業者〉

 

はたしてこのうち、平成7年3月30日の犯行現場に居合わせ、中村の逃走を助けた人物は誰なのか。それが、原氏が確信を持てなかった最後の「謎」だった。

だが今年3月、事件の真相を明かす原氏の著書『宿命』が刊行されたあと、驚きの展開があった。なんと、『宿命』を読んだ協力者自身から連絡が入ったのだ。

軍事組織で鍛え上げた褐色の強靭な肉体と、精巧な射撃技術、瞬時の判断力を兼ね備えた「協力者」は、いったい何を語ったのか――。9月2日(日)、8日(土)のNHKスペシャル「未解決事件シリーズ」での本事件放映を控え、原氏が特別寄稿する。

 

中村の犯行を支えた支援者たち

私は、さらに真相に迫るための方策を模索し、著書『宿命』の中にトラップを仕込んでいた。

エージェントDこと小川雅弘には「筆まめ」という特性があった。この人物は、遠く離れたアメリカまで、逮捕された中村のために貸倉庫やメールボックスの解約手続きをしていた。流暢な英語で解約の電話を入れた上、英文で手紙を書いて解約手続きをするほど几帳面だった。

きっと小川は私の著書を読むはずである。もし、小川が著書の記述に間違えや解釈の誤りを見付ければ、必ずアクションを起こしてくると私は踏んだ。

中村捜査班にとっても、小川は未解明な部分が多い謎の人物だった。エージェントEこと大島洋一と比べても、非合法活動を隠密に遂行できる資質は申し分なかった。中村の意志を継承して、それを実現できるエージェントは、この男くらいだった。