翁長知事を誤解している人が知らない、この国と沖縄への「真の思い」

保守の重鎮が、基地建設に反対した理由
佐藤 優 プロフィール

側近たちへの「最後の指示」

佐藤: 翁長さんが亡くなったのは、8月8日の午後6時43分でした。その日の午後5時50分に、翁長さんの秘書から電話がかかってきたんです。知事は私が電話するとどんなときでも必ずかけ直してきましたから、膵癌を公表されてからは、負担をかけてはいけないから、まず秘書を経由して連絡をとっていたんですよ。

その電話の前に「知事が執務不能になったので、これから副知事を代行に立てる会見をします」という留守電が入っていたんですが、私が気づかなかったんです。

それで、かけ直そうかなと思っていたら、ちょうどかかってきて、「今、会見を終えたんですけれど、実は昨日から知事の意識が混濁し始めまして…日曜日(8月5日)までは本当にしっかりしていたんです。こういうことになったので、大きく状況が変わります。

ところで佐藤先生、先週土曜日の琉球新報の『ウチナー評論』というコラムに、『沖縄を代表する人は翁長さんしかいない、だから翁長さんに出馬表明してほしい』と書いてくださいましたよね。翁長が非常に喜んでいました。くれぐれもよろしくとのことでした」ということだったんです。

このことからわかるのは、つまり翁長さんは、「自分が執務不能になったときには、こういう手順をとってくれ」という細かい指示を側近にあらかじめ出していたんですね。周囲はその指示に従って、私も含め、世話になった人たちに連絡を出した。最後まで気配りの人でした。

邦丸: なるほど。

 

佐藤: それから、翁長さんは本当はどう考えていたのか、ということですが、実はいわゆる「沖縄独立論」には反対していたんです。

沖縄の自己決定権を強化することがなぜ必要かというと、そうしないと、かえって沖縄を日本から分離するような状況に追い込まれてしまう。それを中央政府はわかっていない、という考え方でした。だから、日米安保条約にも賛成なんですよ。

とはいえ、日本の0.6%の面積しかない沖縄に米軍専用基地の70%があるという状態が続くのは、受忍の限度を超えている。しかも、辺野古新基地は普天間の移設にとどまらず、航空母艦が横付けできてオスプレイ100機が駐機できる、さらに巨大な基地になる。このような過重負担を強いるなんて、日本政府は本当に沖縄県民を対等な仲間と見ているんだろうか──こういう疑問が沖縄にはあるから、黙っていられないんだ、と。

それから翁長さんは、ここ最近は朝鮮半島情勢を一生懸命勉強していました。要するに、シンガポールで米朝首脳会談が行われたのだから、もう朝鮮半島の米軍が軍事行動に出る必要はなくなったじゃないか。みんな、もう少し冷静になろう。北朝鮮の脅威が緩和してきているんだから、なおさら辺野古に新基地を造らなければならない理由はない──と。

今年に入ってからも、何度も知事とは電話で話したんです。そのときは、いつ仲井眞(弘多)前知事が行った埋め立て承認を撤回するか、ということを考えていました。このカードは1回しか切れない。知事はリアリストでしたから、そこは裁判になれば勝てる見込みはないと見ていたんです。

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