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ドイツが密かに「独自の核保有」を検討しだした複雑な事情

世界は決して「軍縮」などしていない

トランプが離脱した「イラン核合意」

ドイツのメディアは、トランプ米大統領のことは、彼が大統領に就任する前から現在に至るまで、バカか変人扱いしてきた。

ツイートばかりしている大統領がまともなわけはない。イスラエルの米大使館をエルサレムに移すのも、金正恩と握手するのも、NATO諸国はもっと経費を負担しろと脅すのも、中国に貿易戦争を仕掛けるのも、すべて気まぐれで、衝動的なだけ――。

だから、8月6日の夜、第2テレビのキャスターがワシントン特派員に向かって、「現在の米国のイラン政策では、トランプ大統領にはどのような戦略があるのでしょうね」と質問したとき、私は「トランプ大統領に戦略などないでしょう。いつもの気まぐれです」という答えを予想した。

ところが特派員は真面目な顔で、こう言ったので、私はびっくりしてしまった。

「次のことをよく理解しなければいけません。このハードなイラン政策は、トランプ大統領のアイデアではない。共和党がこの作戦の後ろについて、大統領を支えています。保守派は、イランがテロを支援し、中東に混乱をもたらしている犯人だと信じています。だから、経済政策を駆使して、そのイランに政策を変えさせるのが目的なのです」

トランプ大統領のしていることが、ひょっとして戦略的かもしれないとなった途端、それはトランプ大統領のアイデアではなくなるらしい。

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トランプ大統領が離脱したイラン核合意とは、イランが核兵器を持てないようにするためという名目で、2015年7月に米英仏独中ロとEUが、長い交渉の末、イランとの間で結んだ合意だ。このあと、長年の対イラン経済制裁が外され、イランとの通商が解禁となった。

当時のオバマ政権はもちろん、ドイツ政府も、これであたかも中東に平和が訪れると言わんばかりの喝采ぶりだった。EU、とくに独仏には、早く制裁を解かなければ、インドや中国にイランの美味しいところをすべて取られてしまうという焦りが強かった(中国はイラン制裁に参加していたが、必ずしも経済制裁を守ってはいなかった)。

 

今回の核合意は、イランの弾道ミサイルの開発を禁止しておらず、また、地下核施設の閉鎖も義務付けていなかった。つまり、イランは、平和利用という建前で、その気になれば、ゆっくりながらも核兵器の開発ができる。

だからこそ、イスラエルはこの合意に強硬に反対した。イランが核兵器を手にすれば、イスラエルは、運がよければイランに隷属。運が悪ければ核戦争勃発で、国が無くなる可能性がある。

アメリカも、イスラエル寄りのトランプ政権ができるや否や、この合意の見直しを要求した。しかし、EUに反対されたため、5月に同合意から単独離脱。そして、独自の対策として、8月7日、イラン経済制裁の第一弾を再開した。

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