スノーデン事件から5年…民主主義を脅かすデジタル時代の監視の実態

日本政府の態度は、極めて危険な兆候だ
井桁 大介 プロフィール

日本政府は最先端監視ツールの貸し出しを受けている

その状況を大きく変えるはずだったのが、昨年の「クローズアップ現代+」の「アメリカに監視される日本〜スノーデン・未公開ファイルの衝撃〜」です。

2017年4月、NHKはインターセプトというネットメディアと共同で、スノーデンリークによって得られた流出文書に基づき、日本政府がアメリカ政府からXKEYSCOREという監視ツールの貸し出しを受けている事実を報じたのです。これは衝撃的なスクープでした。

NHKが報じた流出文書(出典:The Intercept)
 

XKEYSCOREは最先端の監視ツールであり、アメリカ国外に住む外国人のあらゆる通信内容を保存し、管理し、検索し、表示するシステムのコードネームです。

流出文書では日本政府がこの第三者版の貸し出しを受けたとされています。アメリカ政府が極秘ツールを日本政府に貸し出す以上、日本語データの解析が目的に含まれていることは確実です。

つまり、日本政府は、日本に住む日本人のあらゆる通信内容にアクセスする権限を手に入れた可能性があるわけです。

XKEYSCOREの貸し出しに関して、法律の規定はありません。誰がいつどんな目的で利用しても、何の規制も働きません。利用基準やアクセス権者が定められていないので、(秘密保護法などの一般法を除いて)濫用や私的利用について個別の罰則もありません。

アメリカ政府との信頼関係もあるだろうから、安全保障などの貸出目的を超えてそれほどひどいことには使われないだろうと考える気持ちはわかります。しかし、それは根拠のない盲信です。

軍事力に匹敵するほど強大な監視ツールの利用に関して、とりわけ盲信は有害無益です。これほど重大な政府の活動に法の支配を及ぼせないのであれば、法治主義・民主主義は画餅に帰すことになります。

〔PHOTO〕gettyimages

内閣情報室が石破氏を監視…?

2018年7月27日付朝日新聞デジタルには、本来外交関係やテロ対策に力を発揮するべき情報機関の内閣情報室が、安倍首相の私的機関として利用されている実態が報じられました。

選挙区ごとに内調のスタッフを派遣し、集めさせた”ご当地ネタ”を安倍首相の街頭演説で利用していたとか、自民党総裁選の対立候補となる石破氏の動向を逐一報告させていたなど、政府権限の私的な濫用が常態化している事実が明らかになりました。

内閣調査室の権限が私的利用されているのであれば、XKEYSCOREの情報が私的に利用されることも十分にありえます。

日本に住む日本人がやり取りするあらゆるメール、電話、SNSのチャットなどが、すべて政治目的で検索にかけられ、現政権の基盤強化のために使われる可能性さえ否定できません。

これはリアルな、そして極めて衝撃的な状況です。

 

XKEYSCOREの利用は認めるべきなのか。利用目的はどの範囲に限定するか。誰が利用できるのか、情報漏洩・私的利用など逸脱・濫用防止の手段は取られているか、事前・事後にチェックする(司法)手続きは設けられているか、情報公開は適切か。

議論すべきことは山のようにあります。しかし、NHKのスクープから1年以上が経過した今、これらの議論は全くなされていません。

そもそも日本では、治安維持やテロ対策に関する情報管理の規律が薄弱です。

個人情報の収集、保管、利用について、民間には詳細なルールが定められています。政府でも、通常の行政活動では詳細な行政機関保有個人情報保護法を始め、法の規律が働いています。

これが、治安維持や犯罪捜査が理由となるとほとんどフリーハンドです。情報機関や警察は、極めてルーズに個人情報を集め、保存し、分析しています。

例えば、警察が被疑者に提出させるDNAに関するルールさえ、法律ではなく、国家公安委員会規則で定められています。保管期間は事実上無制限で、プロファイリングやデータ解析のルールも定められていません(概要は、拙著(共著)『スノーデン 監視大国 日本を語る(集英社新書)』をご参照ください)。

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