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意外! 日本は世界1位の「超深海」大国

最大・最深の海の奥底で起きていること
「地球は青かった」

1961年、この名言とともに人類初の有人宇宙飛行に成功した旧ソ連のユーリイ・ガガーリン以降、550人を超える宇宙飛行士たちが、宇宙空間に到達してきました。日本人に限っても、すでに10名以上が、漆黒の無重力空間を体験しています。

ところが、この地球上には、人類史上まだたった3人しか行ったことのない絶境が残されています。どこだと思いますか?

深さ1万メートルを超える「超深海」です。

人はなぜ深海に魅かれるのでしょうか?
深海では何が起こっているのでしょうか?

研究船・潜水船による調査航海歴が40年を超えるベテラン海洋科学者で、このほど『太平洋 その深層で起こっていること』を上梓した蒲生俊敬さんが緊急寄稿してくださいました。

「7つの海」、ぜんぶ言えますか?

地球の表面のじつに70%が、広大な海によって覆われていることは、みなさんよくご存じでしょう。実際にはすべての海がひとつながりになっていますが、その形状から、海洋は歴史的に、いくつかのエリアに分けられてきました。

俗に「7つの海」とよびます。

その7つとは? ――ぜんぶ言えますか?

現代では、北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋、北極海、そして南極海を指しています。太平洋とインド洋、大西洋をまとめて、「三大洋」とよぶこともあります。

「7つの海」の分類では、大西洋とともに南北に分けて2つと数え分けられている太平洋は、面積・体積とも三大洋全体のほぼ50%を占める、世界最大の海です。私たちの暮らす日本列島は、この巨大な太平洋と直接、東側で接しており、日本は太平洋の一部を排他的経済水域(EEZ:exclusive economic zone)として管轄しています。

太平洋の最深部は1万920メートル

太平洋とは、どのような海なのでしょうか?

南は、南極海に接する極寒の海。北へ向かうにつれて表面水温はしだいに上昇し、赤道あたりでは30℃を超える常夏の海となります。さらに北上すると、水温はふたたび低下していき、氷の浮かぶ北極海にいたります。

太平洋の東側は、南北アメリカ大陸が最北部から最南部まで、あたかも大きな屏風のようにふさいでいます。一方の西側には、ユーラシア大陸、日本列島、マレー諸島、ニューギニア島、オーストラリア大陸、ニュージーランドの島々など、多彩な陸地や島々が並び、陸地と陸地とを隔てる“すき間”があちこちに開いています。

そして海は、「縦」と「横」だけの2次元の世界ではありません。

下向きにも広がりをもつ、立体的な3次元の世界です。海面から見通すことはできませんが、深く、真っ暗な海が、下へ下へと続いています。いったいどこまで続いているのでしょうか?

人はなぜ、海に魅了されるのか?人はなぜ、海に魅了されるのか? Photo by iStock

太平洋の平均深度は、4188メートルもあり、最も深いのは、西太平洋のマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵です。その深さ、じつに1万920メートル!

そこは、この地球上で最も深い海、すなわち、文字どおりの「最深部」です。

「深海」とはどのような場所か

深さ1000メートル、あるいは1万メートルといった深海は、どのような世界なのでしょうか。

海洋の研究者は、この容易にアクセスできない深海にとりわけ強い関心を抱き、さまざまな方法で深海の世界を垣間見ようと努めてきました。そして太平洋の深海は、じつに興味深く、魅力に満ちた研究対象であることがわかってきたのです。

以前に書いた著書『日本海 その深層で起こっていること』の中で、日本列島にとってかけがえのない小さな海、日本海についてご紹介したことがあります。

日本海は日本列島の西側にあって、ユーラシア大陸に挟まれた「閉鎖的な海」です。その閉鎖性を同書では、“風呂桶”にたとえました。これにならえば、太平洋はさしずめ、25メートルプールでしょうか。

日本海に比べて面積は160倍、体積は400倍もあり、まさに「大海」とよぶにふさわしい巨大スペースです。歴史にその名を遺す大探検家、マゼランやキャプテン・クックらが生涯をかけ、情熱を傾注してやまなかった巨大な海――。

その表面から深海底までを3次元の視点で見てみると、じつに興味深い姿が見えてきます。