覚せい剤に大麻…薬物使用者をあえて「罰しない」驚きの改革の効果

クスリの問題使用が減るんです
丸山 泰弘 プロフィール

刑務所に行っても使用は止められない

一方の日本は、数字を見ると、薬物への厳しさがより際立つ。

覚せい剤取締法違反で2017年に検挙された人(10457人)の内訳を見てみると、自分で使用する目的「単純自己使用」の罪が一番多く、6100人で、2番目に多い「自己使用目的の所持」の罪が3032人となっている(ちなみに営利目的の所持は、それ以外に331人が検挙されている)。

つまり、年間に覚せい剤取締法違反で検挙されている人の約87%は自己使用目的の所持罪か使用罪なのである。もちろん、そもそもの母数が異なることから、製造や営利目的の罪などと横並びに考察することはできないが、少なくとも末端の自己使用目的の使用者に対しても厳罰をもって対応するという日本の姿勢は見られる。

しかし、そのことが社会全体から薬物を減らすことに役立っているかと言われれば、首を傾げざるをえない。

 

多くの人が錯覚しがちなのが、「刑務所に行けば薬物使用が止まる」というものである。刑務所をはじめとする刑事施設では、特別改善指導の1つとして、薬物依存離脱指導を行っている。

現場の実務家や本人たちの努力もあるが、回数や時限、参加できる人数が限られている上に、刑務所収容という偏見が社会的な孤立を加速させ、生きづらさから再び薬物使用に至ることも起きる。

いわゆる「再犯」というのは、前回は窃盗、今回が詐欺というように別々の罪名であっても「再犯」とされ、むしろそういったケースが通常である。しかし、覚せい剤取締法違反の人は、前回も新たな罪名も「覚せい剤取締法違反」であるという同一罪名での再犯が多いのが特徴的である。

こうした現象が起きるのは、当然であるとも言える。薬物依存の問題は、本人の意思ではなく「やめたくても、やめられない」ものだったり、そもそも社会的孤立から使用に至っているといった研究報告も存在する。そうなれば、むしろ、社会的な孤立を促進させる施設収容では、マイナス効果が懸念される。

「合法化で薬物使用が蔓延したらどうするの?」

もちろん、日本で一足飛びに「合法化」や「非刑罰化」に向かうのは困難かもしれない。また、初期使用を防ぐための新たな方法を考えなくてはならないだろう。しかし、とくに「違法」か「合法」かに捉われがちな我々にとって、違法ではないものになることは、偏見をなくし、使用せずに生きていきたいと願った人に回復へと向かうことを支援することになるであろう。

一度、想像してみてほしい。家族やとても大事な友人が、ある日「覚せい剤を使っている」と告白してくれたら--。私たちは一瞬「え?」と立ち止まってしまうかもしれない。

しかし、「風邪をひいて頭が痛い」と言われたら、「少し休めば?」といった声かけや、「病院に行こう」という声かけができるはずである。薬物が、違法かどうかの議論を飛び越えて、例えばあたかも風邪のような「治療対象」と認識されれば、早期に回復につなげることができる

また、この手の話が出たときに、薬物が蔓延したらどうするのか?といった批判が起こりがちである。もちろん、楽観主義から合法化を謳うのは危険が伴うであろう。慎重な議論が繰り返されるべきである。そもそも、合法化や非刑罰化で問題使用をゼロにできるとは誰も考えていない。

一方で、刑事罰の対象とし、厳罰化をしたところで現実には薬物使用はゼロにはなっていない。では、いかに効率良く回復や医療につながり、やめたいと考えた人が、その人らしく回復できる方法は何か、と考えた末に採られた政策がハーム・リダクションだったのである。

人の行動に変化を与えるために必要なことは、刑罰ではないということをポルトガルは証明してくれている。彼らは教育の問題であると主張する。はたして、教育が人の行動パターンに変化をもたらすのであろうか。

私は、まだ若輩者であると認識しているが、幼少時代に妊婦や乳児がいる親たちが飲酒をし喫煙をしている場面に何度も出くわした。しかし、近時はめっきり目撃する場面が減少しているように思う。これは、刑罰で規制したからであろうか?そうではなく、教育により価値観に変化を与えたことが行動パターンに変化を与えた結果ではないだろうか。