覚せい剤に大麻…薬物使用者をあえて「罰しない」驚きの改革の効果

クスリの問題使用が減るんです
丸山 泰弘 プロフィール

こうしたポルトガルに代表されるハーム・リダクションの政策は、決して薬物が蔓延することを良しとするわけでない。しかし、「存在してはならない」と言ったところで、薬物そのものが存在していることは現実である。それならば、いかに害悪を減らすかを効率的に考える、といった思想に基づいている。

むしろ、厳罰の対象としないことで、使用者がソーシャル・ワーカーや病院、保健所などに相談しやすい環境を整える。また、合法化によって薬を購入しやすくなるため、マフィアなど地下組織に資金が回らなくなり、結果、それらを取り締まるための捜査機関への費用が抑えられる。これらの費用を医療費や回復の支援に回すのである。

 

ポルトガル以外でも同様の取り組みは行われている。たとえば、ノーベル平和賞の候補者となったウルグアイの元大統領であるムヒカ氏。日本でも「世界で一番貧しい大統領」として絵本が出版されたことで有名であるが、彼は国際的には、就任中に薬物合法化に向けた取り組みを打ち出したことでも有名である。その後、同国は、2013年に大麻の生産と販売を完全に合法化した最初の国となっている。

また、カナダでも2018年6月に議会上院を法案が通過し、同年10月17日にカナダ全土でマリファナの合法化が開始される。ウルグアイに続き、大麻の合法化を行う世界で2番目の国として注目を浴びている。

つまりこうした国々では、薬物使用者を「犯罪者」や「他者」として外に放り出すのではなく、社会の中に包摂して、その人らしく生きていくことを認め、ともに生活していこうという志向が非常に強いのである。

薬物使用が「他者化」される日本

翻って日本はどうだろうか。日本では、冒頭で述べた通り、薬物使用=犯罪であり、薬物を使ってしまう人は「私たちとは関係のない人々」という認識が強いのではないだろうか。

実際、薬物使用者の回復支援に向けた報道もまだ少ない。我々が小さい頃から学校等で教わってきた公益財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の「ダメ。ゼッタイ。」運動は、子どもたちにも分かりやすく違法な薬物の危険性を訴え、初期使用の歯止めに役立っていることは事実であろう。

公益財団法人 麻薬・覚せい剤乱用防止センターのサイトより

しかし、一方で薬物使用の「恐怖」を強調し、それを「犯罪」と認識をさせることで初期使用を防ぐ政策は、諸刃の刃である。「薬物を使用する人」への強いスティグマを生み出してしまうからだ。

たとえば、かつて日本民間放送連盟によって「人間やめますか」の謳い文句とともに覚せい剤追放キャンペーンがCM放送されていたように、一度でも薬物を使用した人は、「人間ではない」という発想につながりやすい。他人に相談することが困難になり医師への受診も困難となる事態にもなっていた。

政策面においても、日本は、アメリカが中心となって進めるゼロ・トレランス(不寛容)をモデルとして政策決定をしている。ゼロ・トレランスとは、そもそも薬物は存在してはいけないものであり、それらの使用、所持を禁止することを前提に採られる政策である。存在してはいけないものであるがゆえに、刑事司法によって規制の対象となる。

もっとも、アメリカでは、末端の薬物使用者に対し刑事司法で対処することがメジャーな方法の一部ではあるが、ドラッグ・コート(薬物専門の裁判所)による回復を中心とした支援も行っている。

さらに、2012年には州民投票でコロラド州とワシントン州で嗜好目的での大麻使用が合法化された。その後も嗜好目的での大麻使用が合法化される州は増えており、先の2州の他にカリフォルニアなど7州とワシントンD.C.でも認められている。さらに、医療目的による医者の処方による大麻使用は、半数以上の29州とワシントンD.C.で認められている。