「次の自民党総裁に誰がふさわしい?」と聞く世論調査に意味はあるか

見え隠れするマス・メディアの邪心
菅原 琢 プロフィール

“急伸”する安倍・石破の「ふさわしい」割合

選択肢や聞き方により回答分布が大きく変化することは、8月の調査と比較すればさらに明確になる。

表2は朝日新聞、JNN、ANNの7月と8月の調査を比較したものである。

ひと月の間に朝日新聞とJNNの調査では安倍、石破の割合が若干伸びているが、これは岸田文雄の撤退による選択肢減や、2人の対決となる可能性が高まったと報じられた影響と思われる。

一方、ANNでは安倍(+12ポイント)と石破(+19ポイント)が大きくその割合を伸ばしている。これは明らかに選択肢から小泉が除かれたことが影響している。

8月22日時点では、読売や日経などは8月の世論調査を行っていないが、今後の調査で小泉を選択肢から外すのであれば、ここで見たANNの調査結果と同様に安倍、石破の数字が“急伸”すると予想される。

しかし、それは急に両者への支持や人気が高まったことを意味しない。各社がこれをどのように説明するのかを見れば、各社の世論調査に関する報道姿勢が多少わかるだろう。

 

マス・メディアの邪心が表れる世論調査

以上のように、「次の首相(総裁)にふさわしい」割合は、政治家個人の人気のようなものを単純に示すわけではなく、派閥の支持などの政局の状況、一般的な知名度や報道のされ方、そして質問の設計でかなり印象の異なる数字が出てくる。

そうした数字のひとつを捉えて、今の有権者は誰某に期待している、支持しているといった議論をすることは当然難しい。

もちろん、小泉の出馬可能性が全くなかったとは言えず、小泉の知名度が高く、期待している人々が一定割合でいることも否定はできない。したがって選択肢に小泉を含む判断が間違いと断じることはここではしない。

むしろ、いろいろな選択肢の多様な調査があったほうが、われわれの世論の現状を垣間見ることができて好都合とも言える。

新聞等の大手マス・メディアがそれなりの費用と労力をかけて行う世論調査によって、われわれは有権者の政治意識を知ることができる。

部分的であるにせよ、これによって政治に対する期待、不満、要求などを有権者は政界に伝えることができるのだから、メディアの世論調査はありがたい存在とも言える。

だが、大手マス・メディアは社会奉仕の一環で調査を行っているわけではない。各社にとって世論調査の意義は、各社独自のニュースを “作る”ことができる点にある。

世論調査の回答者は自ら選択肢を選んでいるように見えるが、世論調査を実施するメディア各社はその選択肢に何を入れるのかを選ぶことができる。

この立場を利用して、より耳目を集める数字を出そう、あわよくば政局に影響を与えようという邪心が見え隠れすることもある。「進次郎待望論」も、回答者よりも前に記者が抱いているものだろう。

いずれにしても、世論調査により表出される「世論」には、実施する側の恣意や作為が多かれ少なかれ含まれていると想定すべきである。

「次の総裁にふさわしいのは誰か」調査は、このマス・メディア世論調査の性質が特に強く表れるという点で、われわれに注意を促す、学習の機会を与えるものと言えるかもしれない。