「次の自民党総裁に誰がふさわしい?」と聞く世論調査に意味はあるか

見え隠れするマス・メディアの邪心
菅原 琢 プロフィール

2007年自民党総裁選〜派閥の支持で数字を伸ばした福田康夫

体調不良を理由に9月12日に安倍晋三首相が退陣を表明した直後には、麻生太郎自民党幹事長が有力候補と見られていた。

8日から9日にかけて行われた読売新聞の調査では、麻生を次の首相に「ふさわしい」とする割合は15.8%であった一方、福田康夫は5.8%に過ぎなかった。

しかし、13日夕方に福田康夫が総裁選への出馬を表明すると「次の首相」の数字は大きく変化することになる。

13日に行われた朝日新聞世論調査の「次の首相には誰がよいと思いますか」という質問(自由回答)では麻生13%に対して福田は14%とわずかに上回り、13日から14日かけて行われた共同通信社の調査の「次の首相にふさわしい人」を聞く質問では福田28.1%に対して麻生18.7%となった。

15日から16日にかけて行われた朝日新聞世論調査では、「次の首相にふさわしい」のは麻生、福田のどちらか2択式で聞いたが、福田53%、麻生21%と大差がついていた。

〔PHOTO〕gettyimages

福田の数字が出馬表明前後で「伸びた」のは、大きく二つに分けて説明できる。

まず、出馬表明により具体的な選択肢となったため、人々が選択するようになったと考えられる。

逆に言えば、出馬表明しなければ多くの人々は「ふさわしい」とも「よい」とも答えてくれない。

また、自民党内の派閥・グループや議員が福田支持を続々表明し、次の総裁となる可能性が高まったことも重要である。

世論調査の回答者が各政治家についてよく知らず、好みがない場合でも、誰が後継総裁として支持されているか、誰が総裁になりそうかは、誰が「総裁にふさわしい」と答えるべきかの判断材料になる。

 

2011年民主党代表選〜「ふさわしい」が低いのに高くなった野田佳彦内閣支持率

2011年8月29日の民主党代表選は、菅直人首相の辞任表明(26日)の3日後と異例の短期決戦であった。

候補者が確定した後の28日に読売新聞が行った緊急世論調査で、5人の候補のうち誰が次の代表、首相に「最もふさわしい」か聞いている。結果、ほぼ半数の48%の回答者が前原誠司を選択した。

だが代表選では、前原は3位となり決戦投票にも残れなかった。当選した野田佳彦の「最もふさわしい」割合は9%と5人の候補中3番手に過ぎず、代表選で投票した民主党議員は「民意」に逆らったような形となった。

ところが、発足時の野田内閣支持率は65%(読売新聞)と高い値を記録した。ちなみにこの数字は第2次安倍内閣発足時と同じである。

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代表選直前の「首相にふさわしい」調査で前原の数字が他の4候補を圧倒したのは、“人気”以前に一般の認知度に大きな差があったためと考えられる。

民主党代表経験者でもある前原は、民主党政権下では国交相、外相と重要ポストで入閣していた。

これに対して野田は、“政治通”には民主党の有力議員として名が知られていたが、ニュース等を通じて一般に顔を売る機会は菅内閣での財務相が初めてだったと言える。

また、知名度、認知度がないからこそ悪印象、否定材料もなく、様子見の支持により当初の内閣支持率も高い値となりやすく、急落もしやすかったと指摘できる。