あと20年で氷が消滅!? 北極の温暖化が日本も直撃する理由

北極は、もう後戻りできない
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すでに元に戻れない変化が起きている

今回のAMAP報告書で特徴的なのは、「北極域の気候は、新しい状態に移行しつつある」「根本的な転換」「新しい『型』になりつつある」というように、現在の北極域が、これまでとはすでに別物であることを強調している点だ。

「たとえば海氷にしても、その減少にはもう歯止めがかからないのではないか。そのような見方は、ここ1~2年で強まってきている」

報告書のまとめに加わった海洋研究開発機構北極環境変動総合研究センターの菊地隆(たかし)センター長代理は、そう指摘する。

冷戦時代に米ソが向き合っていた北極海では、水温などのデータは軍事機密だった。公開されるようになったのは、20世紀が終わるころ。

その空白域を埋めるかのように、北極域の研究は、いま急速に進んでいる。

NASAの撮った北極北極海での探査も進行中だ Photo by NASA / Kathryn Hansen

夏から秋にかけて海氷が少ないと、日本は厳冬になる

北極研究では、日本の研究者による成果が、早い時期から大きく貢献している。

たとえば、北極海の氷の減少が、遠く離れた東南アジアの気候に与える影響。日本の気候に影響を与える現象としては、太平洋の赤道沿いの海水温が平均からずれるエルニーニョ、ラニーニャが昔から有名だ。

エルニーニョのときは冷夏・暖冬に、ラニーニャのときは猛暑・厳冬になる。

これに北極海の氷という新たな視点を持ち込んだのが、新潟大学の本田明治(めいじ)准教授らが2009年に書いた論文だ。

その当時、夏から秋にかけて北極海の氷が少ない年は、次の冬に日本などの極東地域が寒くなるといわれていた。シベリア沿岸の9月の氷が極端に少なかった2005年は、その年から翌年にかけての冬に日本に寒気がやってきて「平成18年豪雪」となった。

本田さんらは北極海の海氷と中緯度の天候との関係を、その影響の仕組みまで含め、初めて明確に指摘した。

北極海の氷が解けると、氷より温度の高い海面が顔を出す。したがって、氷の少ない年は、海の熱で大気が暖められやすい。とくに大気が冷えてくる11月ころ、シベリア沿岸西部のバレンツ海やカラ海では盛んに大気へ熱が移り、その影響で12月ころの極東が寒くなる。

北極海の氷と中緯度の天候を結びつけたこの論文は、その後、多くの論文に引用されている。現在にいたる北極域の研究に重要な視点を与えた証だ。