東京五輪の公式サイトより

東京五輪ボランティアをやっぱり「やりがい搾取」と言いたくなるワケ

過去の「動員」を思い出す…

9月中旬から、東京五輪・パラリンピック(以下、東京五輪)で運営に関わる「大会ボランティア」が募集される。これに先立ち、街や交通の案内を行う「都市ボランティア」が各自治体によってすでに募集されている。大会ボランティアが8万人、都市ボランティアが3万人という大規模な人数である。

一方で、求められる大会ボランティア像が明らかになってから、批判の声も高まってきた。外国語能力や高いコミュニケーション能力をもち、1日8時間で10日間以上働ける人といった条件に対し、無償で交通費や宿泊費も出さないのは、まさに日本的なタダ働き、ブラック労働、やりがい搾取ではないかというものである。

これに対して推進側も、大会組織委員会の幹部みずから国際スポーツ大会でボランティアをして見せたり、近郊交通費相当分の物品を支給することを決めたり、右往左往している。

おそらく今後も同じようなボランティア批判が盛り上がるだろう。しかしタダ働きという批判はどこまで有効なのか。論点を整理しておきたい。

 

ボランティア大量導入はこうして始まった

五輪ボランティアを「搾取」と見る議論が支持されるのは、最近のブラック労働に対する批判が広がったことの表れでもあり、その意味で正常なことである。だが、それが日本特有かどうかは議論の余地がある。というのも近年の五輪では毎回多くのボランティアが活用されてきたからだ。

夏の五輪の大会ボランティアの概数は、ロサンゼルス五輪5万人(1984年)、ソウル五輪2万7千人(1988年)、バルセロナ五輪3万人(1992年)、アトランタ五輪4.2万人(1996年)、シドニー五輪4万人(2000年)、アテネ五輪4.5万人(2004年)、北京五輪7.5万人(2008年)、ロンドン五輪7万人(2012年)、リオデジャネイロ五輪5万人(2016年)と言われる(報道や数え方によってバラツキはあるが)。

基本的に無償で交通費・旅費が自己負担という条件も大差ない。

専門性のある人をタダ働きさせるのも似たり寄ったりで、例えばロンドン五輪では7万人のうち5000人が医療スタッフである。このときはイギリスの保健省が、看護師がオリンピックのボランティアに参加できるよう有給休暇を取らせるように雇用者に求めていた。オリンピックという枠組み自体に「タダ働き」が組み込まれているのだ。

オリンピックでボランティアを大量に使うようになったのはロサンゼルス五輪以降だ。ゴリゴリの新自由主義者レーガン大統領のもとで五輪の民営化が進められ、一気に商業主義化した記念すべき(?)大会でもある。ボランティアによって人件費を削ったこともあって黒字となり、五輪は儲かるという認識を広げることになる。

ボランティア大量導入のきっかけとなったロサンゼルス五輪(photo by gettyimages)

ところが、味をしめたアメリカは次の1996年のアトランタ五輪で大失敗する。やはり運営をボランティアに依存する完全民営だったが、ボランティアが途中で多く辞めたり、バス運行システムが破綻するなど大混乱が起こった。さらに警備もボランティア頼りだったことがテロを許してしまい、2人の死者を出すという最悪の事態を招いた。