40時間勤務、産前休業0日…いま、医師の激務は「極限状態」だ

東京医大問題の根底にあるもの
小林 美希 プロフィール

産婦人科医会の「勤務医部会アンケート2017」(暫定値)では、1ヵ月の当直数が産婦人科で5.7回、救命救急で4.3回、小児科で4.3回、内科が3回、外科が2.9回だった。労働基準法を守ると4.3回で、産婦人科は1.4回分多い。

宿直中の平均睡眠時間は4.9時間。産婦人科の1ヵ月の平均在院時間は295時間で、労基法(176時間)より74時間多いというのが現状だ。

分娩施設には、いつくか種類がある。

ハイリスク妊婦や新生児を診ることができる母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)や新生児集中治療室(NICU)を備えた「総合周産期母子医療センター」と、それよりはリスクの低い母子を診ることができる産科・小児科(新生児)を備える地域周産期母子医療センターがあり、その他、健康な妊婦と新生児のお産ができる一般病院や診療所となる。

高血圧や切迫早産(早産しかかる状態)、胎児に病気がある、高年齢妊婦など妊娠異常や出産のリスクがある妊婦は総合周産期あるいは地域周産期で出産する。

そうした病院の勤務医は朝から外来で診療し、昼食をとることもままならないまま病棟を回診。お産に立ち会ったり帝王切開手術を行ったりするなど目まぐるしい1日を過ごす。

当直があれば、そのまま病院に残って医師が対応すべきことが起これば診療に当たり、また朝から外来が始まることがザラにある。

つまり、ほぼ仮眠も休憩もとれないまま連続で40時間近く勤務しているのだ。

 

妊婦の4分の1が「お産難民」に…?

看護師の場合は当直でなく多くが「夜勤」となるため、3交代あるいは2交代勤務で入れ替わることができるが、医師はノンストップ。

医師のワークライフバランスを図る病院では、医師も交代制にして夜間に働いた後は勤務しなくていいようにしているが、それは十分な医師の体制を組める大病院に限られ、交代制勤務を実施している分娩施設は全国で7%に過ぎない。

産婦人科医会は、もし、医師が1日8時間労働で月22日の勤務になって交代制勤務をとって労働基準法を守れば、全国の分娩施設でどのくらいの医師が足りなくなるかを試算している。

分娩できる病院は2017年で1054施設あるが、交代制勤務を現在の医師数で維持できるのは、わずか541施設。すると、23万5564人の妊婦の出産場所がなくなり、妊婦全体の4分の1が「お産難民」になるという。

これまで1人の医師が外来も病棟も診て手術までこなしているのだから、産婦人科医が3交代勤務になると当然、外来、手術、病棟の担当医も他に必要となり、ひとつの病院で産婦人科医が16人も必要になる。

総合周産期と地域周産期でそれぞれ16人の医師を確保するには、全国で1545人の医師が不足している状態だ。仮に非常勤の医師を含めたとしても、1231人が不足し、約7割の施設で運営できなくなるという。

現状として、労働基準法を守ることができるのは、総合周産期で38%、地域周産期で7%だけ。抜本的に、医師が不足しているのだ。

もはや、医師が身を粉にしてプライベートを犠牲にしなければ医療の現場は支えられず、女性の医師が妊娠中や子育て中だからといって配慮できない極限状態にあるのだ。