老舗和菓子・たねやを救った「バームクーヘン革命」の秘密

これが本物の近江八幡のバームクーヘンです
山本 昌仁 プロフィール

小さけりゃ売れるのか?

人々が何を求めているかを知る。「空気感」としか表現しようがないですが、時代の空気感をとらえる感性が必要です。これは別に新商品を開発することに限りません。「出し方」だけで、ずいぶん結果が変わってくる。

例えば気候の影響です。例年、うちではゼリーを5月から売り始めますが、寒かったら売れるはずがない。そんな年は製造計画を変更して、ゼリーは少なめに、饅頭を多めに作るとか調整すべきでしょう。

サイズについても同様です。健康志向なのか、最近は小さめの菓子のほうがよく売れます。

クラブハリエのバームクーヘンの出荷量は1日2万個と、日本最大です。実は、そのうち6割ぐらいは、通常サイズでなくミニサイズなのです。将来、バームクーヘンと聞いたとき、みんな小さいサイズのものを思い浮かべるようになるかもしれません。焼く手間はミニサイズのほうがかかるので、「いずれミニばっかりになるんじゃないか」と製造現場は戦々恐々です。

バームクーヘンもミニ志向

ケーキも、かつてはデコレーションケーキのようなホールが主流でしたが、最近はカットした小さいものが人気です。饅頭でも、たねや饅頭や末廣饅頭は、一口で食べられるサイズにしてあります。

それなら、すべて小さく作ればいいかというと、そうでもないのです。プリンはボリュームがあったほうが売れます。たねや長寿芋もそうで、大きめに作らないと売れない。饅頭は一口のほうがいいけれど、芋はガバッと食べたいということなのでしょうか。理由がわからないので、様子を見ながらやるしかありません。

面白いのは、おはぎ。うちでは小さいサイズにして、人気を呼びました。すると他社が追随して、みんながみんな小さく作るようになった。そこで4年前から、逆に大きいものを作るようにしたのです。すると、再び売れ出しました。同業他社の逆を行くことも、ときには必要なのでしょう。

 

気をつけないといけないのは、変えればいいというものでもないこと。絶対に変えてはいけないこともあります。例えば、それまで使っていた食材をグレードアップするぶんにはよくても、グレードダウンしてはいけない。

食材は年によって出来不出来があり、当然、入手困難になるときがあります。そういうときは、無理して作らない。「今年は不作だから、こんな栗を使ってますけど、事情が事情なので辛抱してくださいね」では、ブランド価値を棄損してしまう。

たねやの菓子は高い。でも、1500円を払っても、2000円の価値がある。そういう信頼があるから、商いが成立している。その信頼を裏切るぐらいなら、「今年は作りません」と頭を下げるほうがいい。それがブランドを守るという意味です。