海のプラスチックごみに対する関心が、急速に高まっている。私たちの生活を支えている便利なプラスチックがごみとなって海を汚し、生態系に脅威を与えているのだ。
とくに近年、大きさが5ミリメートル以下に砕けた小さな「マイクロプラスチック」の研究が進み、いったん海に出て貝などにとりこまれたこの小さなプラスチックごみを、私たちが海産物とともに食べてしまっている可能性もきわめて高くなっている。
世界はいま、プラスチックの使用を減らす努力を進めていく流れにある。
今年の6月、英ハル大学などの研究者グループが、「スーパーマーケットで食用に売られているムール貝に小さなプラスチックごみが含まれている」という論文を発表した。
英国内の8つのスーパーで販売されているムール貝を集めて調べたところ、生のムール貝には1個あたり4~6個くらい、半加工品のムール貝には1個あたり3~4個くらいのマイクロプラスチックが含まれていた。
そのほとんどは大きさが1ミリメートル以下の小さなもので、半分以上が繊維状のプラスチックだった。これが食卓に並ぶ。
私たちがプラスチックごみを食べているかもしれないことは、じつは目新しい発見ではない。
東京農工大学の高田秀重(ひでしげ)教授らのグループが、東京湾で2015年8月にとった64匹のカタクチイワシを調べたところ、約8割にあたる49匹の消化管からマイクロプラスチックがみつかった。
沿岸域に多く生息するカタクチイワシは、めざしやしらす干し、煮干しとして食卓でもおなじみだ。
含まれていたマイクロプラスチックは1匹あたり最大で15個、平均すると2.3個だった。合計150個のマイクロプラスチックで多かったのは、その86%にあたる129個の砕けた小片だったが、7%の11個は「マイクロビーズ」だった。
高田さんらが市販の洗顔料を調べたところ、このマイクロビーズによく似た微小プラスチックが含まれていたという。
陸で生産、使用されたプラスチックがごみとなって海を汚し、それがマイクロプラスチックとして食材に混じって私たちの体内にも戻ってくる。
すでにプラスチックごみは地球の生物の食物連鎖に入り込み、その中で果てしない循環を始めている可能性が高い。