数学科女子が「3.14小説」に挑戦!「πが導くラブストーリー」

ホワイトデー特別企画

2045年3月14日

お昼のニュースで、ヒューマノイドが円周率πについて情緒的に語り始めたという話題が取り上げられた。

これまで「感性を持たない」とされていたヒューマノイドが、あたかも人間のように円周率に「神秘」を感じていることが議論を呼んでいるようで、「一部の研究者は『すでにヒューマノイドには、感性や感情が備わっているのではないか』との見解を示している」とニュースは報じていた。

人間が感じる「神秘」とヒューマノイドの感じる「神秘」に、違いはあるのかしら……?

そんなことを考えていたら、仕事を早めに終えたのか、ナオミチが突然家に帰ってきた。

「ただいま! 間に合った〜!」

どうしたの? と尋ねる私の言葉を遮り、ナオミチは話し始める。

「マドカ、さっきのニュース見た? ヒューマノイドが円周率について語り始めたって話。まさかまだ『ヒューマノイドは感性があるのか』なんて遅れた議論をしているなんてね。

でも実は、僕もちょうど円周率について考えていて、それで、マドカに聞いてほしいことがあるんだ。 はい、これ」

そう言いながら、ナオミチは私に小さな箱を手渡した。

「あっ、もしかして、ホワイトデーのプレゼント?」

「開けてみて!」

箱の中に入っていたのは、直径1.5cmの銀色に輝く“円”だった。

時計を見ると、針はちょうど15時9分を指している。

「僕たちのエンに乾杯!」

円周率の日にぴったりのプレゼントだろ? と言わんばかりに、得意げな顔をするナオミチ。

「マドカは知ってると思うけど、πは無理数。循環しない無限小数だ。

π=3.141592653……

『……』の先に無限に数字が続く」

有理数と無理数

「円周率のことを考えていたら、不思議と、マドカへの俺の気持ちと円周率がそっくりだって気がついたんだよ。

一緒に暮らしていると、ときどき割り切れないこともあるけれど、円周を直径で割っても、決して余りがゼロになることがないように、マドカへの想いは尽きることがないんだ」