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横須賀線周辺の「急速な高齢化」が示す、東京の明るくない未来

山の手化する郊外、郊外化する山の手

右回りの法則

都市には右回りの法則がある。都市の拡大・発展はまず南に向かい、その後、西⇒北⇒東に進むというものだ。この法則は都市再生の過程にもあてはまる。

23区の高齢化の動向に照らすなら、中心部で生まれたまちが若返る動きが、南ではすでに定着し出している。西は、新たなサイクルを呼び込んで再活性の道を歩み得るか、このまま高齢化の進展に埋没してしまうかがしのぎを削る、いわば最前線にある。北は、全体的に低迷状態が目立つものの、時代を捉えたまちの再編に乗り出そうとする動きも現われ始めている。

東は、前の周期がまだ完全に終わっていない。と同時に、遅れたがゆえに残った「家族主義」の地域文化が、次世代のキーワードへと化しつつある。

横浜・湘南、多摩・中央線、埼玉、千葉と並べれば、東京郊外もやはり右回りのように見える。だが、実態はどうなのか。郊外鉄道の沿線データは、これを知る有効な手がかりとなるはずだ。

なお、東京ではこれまで繰り返し右回りサイクルが訪れているが、以下便宜上、かつて東京を含むわが国の都市部全体が右肩上がりを謳歌していた時代における、いわゆる「開発・発展型」のサイクルを総じて「第1周期」、いま始まり出したまちを若返らせる新たな動きを「第2周期」と呼ぶことにする。

 

山の手化する郊外、郊外化する山の手

検討の対象としたエリアは東京50キロ圏内で23区外の郊外部、対象路線は東京の中心部から放射線状に延びる沿線のうち、50キロ圏以遠にまで至る15路線を基本とし、40キロ圏までで終点を迎える5路線を参考として追加した。詳細は「参考資料1」に記したとおりである。

参考資料1
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図表1は、主要な5つの指標を、対象とした沿線勢圏別に集計した結果だ。マクロに見て次の傾向が指摘できる。

23区の沿線データと比べ、最初に目につくのが高齢化進展度の高さだろう。23区最高の京葉線(3.27ポイント)を下回っているのは、東海道線と京急線の2路線だけ。多くの路線が全国平均(3.62ポイント)を上回る。高齢化率が全国平均(26.6%)よりも高いのは横須賀線だけだが、その裏で子育て世代の減少をはじめとした世代間の人口バランスが急速に崩壊しつつある様子が浮かび上がってくる。

23区と異なるもうひとつの特徴は、ひとり暮らしの高齢者が少ないこと。最高の京急線でも、23区内28路線にあてはめれば、下から3番目に相当する。これに対して高齢夫婦2人暮らしは、23区平均(30.5%)や全国平均(31.4%)を上回る33~36%に集中している。

高齢化率はまだそれほど高くないが、高齢化の進展が速く、かつ高齢夫婦2人暮らしが多い。この特徴は、23区の西部山の手地区と類似する。郊外が山の手化しているのか、山の手が郊外に似ているのか。おそらくその両方だろう。

前者は、「山の手ライススタイル」が東京圏に住む人々に広く浸透していることを、後者は住宅地区として23区の他のエリアほど強烈な個性を持たない山の手は、次第に郊外との差がなくなりつつあることを意味している。