「〇〇は大便級に不潔だった!」的なニュースが的外れな理由

お風呂のアヒルちゃんは「菌まみれ」?

これは、前述した菌の多くが「日和見(ひよりみ)菌」と呼ばれる感染力が比較的弱い種類であるためです。そうした菌は人間の体に侵入しても、免疫などの防御システムに阻まれ、滅多なことでは健康に危機を及ぼしません。

一方で、大腸菌やサルモネラ菌などの強い毒性を持つ細菌は、体内に侵入すると体の防御システムだけでは太刀打ちできないため、様々な病気を引き起こします。

今回、細胞が検出されたレジオネラ菌や緑膿菌は日和見菌の一種であり、大きな健康被害に繋がる可能性は低いものの、幼児や高齢者など免疫機能が低い人は、感染から重症化を引き起こす危険があります。

そのため、幼児や高齢者の家族がいる場合は、万が一の事を考えて長年使っているお風呂グッズを処分するというのも一つの選択肢でしょう。

ですが、ここで注意するべきは、アヒルちゃんに日和見菌の微生物が付着するきっかけは、あくまでお風呂場の環境にあるということです。

世界最大級のラバー製アヒルアヒルちゃんの処分、ちょっと待った! Photo by Getty Images

体を洗わずに湯船に入る、お風呂場の掃除を全くしていない、追い焚きを繰り返してお風呂の水を何日も変えない……。このような環境下では、想像以上のスピードで細菌が増殖します。

もしお風呂グッズを処分するのであれば、これまでのお風呂場の環境もあわせて見直さなければ本末転倒になりかねないことを覚えておいてください。

また、お風呂グッズに愛着を持っていてなかなか処分できない場合は、お風呂掃除を毎日する、お湯を毎日変える、お風呂グッズを定期的に消毒するといった対策を取ることで、健康被害のリスクを大幅に下げることができます(レジオネラ菌も緑膿菌もアルコール消毒が有効な細菌ですので、市販の殺菌剤などで対処可能です)。

拡散する前に冷静な情報選択を

今回の研究と似たようなケースで、2017年には台所のスポンジに付着する細菌についての研究結果が発表されていました。

この研究結果をもとに「台所のスポンジは大便並に不潔で、いくら消毒しても殺菌されず、かえって菌が増殖して非常に危険」という主旨の記事が国内外で取り沙汰され、SNS経由で広範囲に拡散されました。

しかし、この研究結果についても、「サンプルの母数が非常に少ない」「残っているのはほぼ無害な日和見菌ばかり」「掲載されている『Scientific Reports』というジャーナルが、しばしば査読の甘さを指摘されている」など、信憑性に関する懸念が研究者のコミュニティから指摘されています。

近年、ネット上のフェイクニュースや扇動的な記事に対して社会の監視が強まっていますが、それでも海外メディアを一次情報とした翻訳記事では内容の妥当性に関して判断がつきにくい場合があります。

刺激的なニュースは話のネタとして受け入れられやすい面があるだけに、脊髄反射的に拡散する前に「本当にそうなのか?」と考えるべきかもしれません。

【参照元】
Ugly ducklings—the dark side of plastic materials in contact with potable water
Your Cute Rubber Duck May Be a Haven for Bacteria

文・くまむん

昼間はサラリーマンをしています。学生時代は表面物性の研究をしていましたが、現職は科学とはだいぶ離れた仕事に落ち着いてしまいました。「趣味はサイエンス」と言えるほどには、科学が好きです。Lab-Onで、海外の研究に関するニュースを中心に書いています。