ハッブル宇宙望遠鏡のとらえたダークマター Photo by NASA

「ダークマターなし銀河」の発見が、逆に「存在する証拠」になった!

見えないけれどそこにある「暗黒物質」
2018年3月に「暗黒物質(ダークマター)の存在しない銀河発見」のニュースが話題になった。
この記事では、まず「暗黒物質とは何なのか?」を解説。その上で、この発見の科学的な意味についても考えたい。

本記事を通して、今回の発見が「暗黒物質の存在を支持する」ものであるということがお分かりいただけるはずだ。

(※この記事は「Lab-on」からの転載です。オリジナルサイトはこちら

眼に見えないけれど存在する「謎の物質」

「暗黒物質(ダークマター)」とは、「重力を通してのみ物質と影響を及ぼし合う物質」を指す。

名前だけ聞くとオカルト的にも思えるが、暗黒物質があるという仮定を導入することで様々な天文学に関する観測事実の説明の整合性がとれる。

そのため、多くの天文学者が「暗黒物質は見えていないが存在する」と考えている。どういうことか説明していこう。

宇宙には数多くの銀河が集った「銀河団」と呼ばれる天体が存在する。銀河団に属する個々の銀河は、秒速約1000キロメートルという非常に大きな速度で乱雑な運動をしている。

奇妙なのは、「そんなに速く運動している銀河が、なぜひとつのまとまりとして集まり銀河団を形成できているのか」ということだ。

銀河団は銀河が互いの重力で引かれあって集まっていると考えるのが自然だが、銀河の運動速度はとても大きい。銀河や銀河どうしの間に満ちているガス(=見えている物質)が持つ重力だけでは、互いを繋ぎとめられない。

そこで、「銀河が大きな運動速度を保ちつつ集団でいられるのは、見えていないけれど重力を及ぼす物質が銀河団に多数含まれているから」という考えが生まれた。

また、銀河団には摂氏約1兆度に達するガスが閉じ込められているが、これほど高温のガスを閉じ込めておくには強い重力が必要で、見えている物質だけでは足りないと分かった。

ただしこれらだけでは「暗黒物質がある証拠」というには不完全で、望遠鏡では見えないだけで暗い天体がたくさんある可能性も考えられる。

ダークマターの証拠を観測で掴んだ!

暗黒物質の存在を示すもうひとつの証拠は、星やガスが円盤状に分布していている渦巻銀河の回転の様子から得られた。

渦巻銀河の中にある星は回転運動をしているが、その運動にも、銀河団の場合と同じく奇妙な点がある。銀河の外側にある星は、回転速度が非常に速いのだ。

見えている物質の重力しかないとすると、それほど大きな回転速度の星は、遠心力で飛んでいってしまうはずである。しかし実際は銀河内に繋ぎとめられている。

渦巻銀河の運動を説明する場合も、見えている物質だけの重力では足りない、という問題にあたったのである。

暗黒物質のより明確な証拠は、銀河団同士の衝突した跡とされる「弾丸銀河団(Bullet Cluster)」を観測することで得られた。