「パワハラ教授」に甘すぎる処分を下した山形大学の不可解

減給処分、それもたったこれだけって…
田中 圭太郎 プロフィール

一目瞭然

そもそも大学は、パワハラを当初から隠し続けていた。去年2月に職員Aさんからパワハラの相談を受けた組合は、事案の重大性を考慮して、水面下で大学と交渉。去年3月には、工学部長と団体交渉して、例の貼り紙などの証拠資料を渡していた。この時すでに、Aさんの雇い止めは決まっていた。

その後、組合は2度にわたって、パワハラを把握しているのかどうかと、どのような対応をしているのかについて、学長宛てに質問書を出した。

 

すると、小山学長名での回答は2回とも、「個別の案件については、その存否も含めて回答いたしかねます」というもので、事実の解明に動こうとはしなかったという。Aさんの雇い止めについても、「法的手続きを適正にとっております」と、全く取り合う気がない態度だったようだ。

このため組合は、去年11月に記者会見して、パワハラの証拠となる貼り紙を公開した。

この貼り紙が全国紙やテレビなどで取り上げられたのは周知の通り。すると大学は、5日後にあわててキャンパス・ハラスメント防止委員会に、この件に関する特別対策委員会を立ち上げることを伝えた。

その際、小山学長は、「相談者(Aさん)はパワハラとは言わず、職場環境の改善をしてほしいということだった。改善されたと報告を受けていたので、組合の写真を見て、私自身、驚いている」と発言。しかし前述の通り、実際には貼り紙は去年3月の時点で大学に提出されていたものだ。組合が明らかにしなければ、大学はあくまで隠すつもりだったのだ。

調査委員会がパワハラと認めた内容以外にも、組合では多くの職員がパワハラ被害を受けたとみている。センター長の教授が女性職員にハサミを投げつけたという情報もあれば、退職する職員に対して、退職による損失を補填するよう脅し、高額な寄付金を納めるよう強要したことなども把握。今年3月末には2人の職員が「こんなところにはいられない」と退職したという。

謎だらけ

パワハラの舞台となった山形大学×EV飯豊研究センターは、成長分野であるリチウムイオン電池の研究開発拠点。センターは2016年に開設され、パワハラをしたと認定された教授が、開設当時からセンター長に就いている。

この教授は、機能性電解液の研究の第一人者と言われ、もともとは民間企業に勤務していた。2011年に退職して、工学部の教授に就任。工学部の関係者によると、「いつのまにかいた」感じで、最初は目立たなかったという。それが教授就任から数年で、山形大学×EV飯豊研究センターに抜擢されたのだ。

ある関係者によると、教授が山形大学で勤務するようになったのは、大学のある理事との個人的な関係がきっかけだと見られている。理事が別の大学に勤務している時、教授はその大学の院生だったそうだ。

ところで、このセンターは山形大学から飯豊町に開設を提案し、センター開設の総事業費15億円のうち7億円を町が負担した。共同研究には、企業も参画しているとみられる。山形大学の役員たちにとっては、当該の研究所長は、行政や企業から資金を引っ張れる力をもった人物だったのかもしれない。

それにしても、スタートしてわずか2年あまりで、複数のパワハラ事案が起きているのは、異常な事態と言える。この研究所にはセンター長以外に教授は不在で、他のキャンパスとは離れた場所にあるため、他の教員の目が届かない。パワハラが起きていることは、工学部の教員でも分からなかったという。

さらに奇妙なのは、この施設にはホームページなどが存在しないことだ。大学によると、外線電話もないという。センター自体がこの教授のための施設として、ある種異様な体制になっていたことは十分考えられる。

言うまでもないが、大学は研究と同時に、学生の教育を行う場でもある。弟子の研究者たちにパワハラをし、雇い止めするのは、大学として正常な姿とは言えないだろう。学内の関係者からは、こんな声も聞こえてくる。

「人材をパワハラで潰すなら、センターは大学の一機関ではなく、株式会社にでもすべきだろう」

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