Photo by iStock

第一線の女性外科医が「女性に外科医は無理」に反論する

東京医大の入試差別より効果的な解決策
東京医科大学の入試で行われていた女性差別。8月7日に開かれた学校側の記者会見では、女子学生の比率を3割以内におさめるために事実上、女子学生は減点されていたことが認められた。その理由として「年齢を重ねるとアクティビティが下がる」「女子で外科医になる比率が少ないし、女子は外科医になるのは難しい」と言われていることも報じられた。ジャーナリストのなかのかおりさんが、一線で働く女性外科医から、外科医として働く体制をいかにして築いてきたか、そして実際に女性に外科医は無理なのか率直な話を聞いた。
8月7日に大学側が開いた記者会見で、女子学生の点数は8掛けにされていたことが判明した

「女性の外科医3人で男1人分」なんてとんでもない

東京医大の報道について、40代で小学校低学年の子を持ちフルタイムで勤務する外科医・B子さんからこんなメッセージをもらった。

「声を大にして言いたい。女医は体力がないから外科医が難しいということは全然ありません。男性より腕力は足りないので唯一、整形外科だけは不利だと思います。でも持久力と我慢力は女医の方が優れている。大学医局にいた時など、男性が10人倒れている中、私だけピンピンしていてほめられたものです」

4人の女性外科医の後輩と働いたB子さん。「いずれも体力は全く遜色がないし、むしろ男性よりミスが少ない。女性は細かいところまで気づいて、この検査もやっておこうとオールラウンドな全身管理が得意なことが多いです。コミュニケーション上手で、頼れる。最近、外科に限らず女医の方が患者さんの死亡率が低いというデータも出ましたよね。『外科医は女3人で男1人分』なんてとんでもない。100%女医だけになったら困る点があると思うけど、100%が男性医師でもダメな点があります。男性医師に見せるのがどうしても恥ずかしい女性が、受診しなくなってしまいます」

 

どうやって外科医になったか

これだけ問題になるほど大変だという外科医に、B子さんはどうやってなったのか。

B子さんは幼い頃から体が弱く、病院によく行っていた。中高生の時、手に職をつけたいと思うようになり、「体が丈夫になったから恩返しをしたい」と医学部を志した。

国公立大の医学部に進むと、同級生100人のうち女性は10人ほど。「理数系の問題が難しい大学だと比較的、女子は大変だけど、論文や面接なら女子のほうが優秀なのでは」とB子さん。最初の2年は一般教養。2年目の後半から、病院の現場を見る。3年生は医学基礎の授業がメインになり、生理学や薬学、解剖学の実習もあった。「解剖で気持ち悪くなって倒れるのは主に男性でした。5~6年生で病院の実習が始まり、サボる学生もいて温度差がありました」

実習は、1週間ずついろいろな科を回る。外科には3週間。夏休みには自分で選んだ2つの大きな病院に行き、研修医や偉い先生について勉強した。大学で単位を取得し、卒業試験を経て国家試験を受け、合格すると研修医としての修行が始まった。

B子さんは5年生の最初に、外科に進むと決めていた。実習で外科の手術に参加してみて、もともと手先が器用なのも生かせるし、教科書通りでない臨機応変の対応が求められ、自分に向いていると思った。外科医と同じ生活をしてみようと、先輩の研修医について夜遅くまで病院に残り、土日も自主的に実習に行っていた。

2年間の研修医生活の中で、一番大変だったのは救急の担当だという。「例えば月曜日の朝8時から日曜日の朝10時までほとんど寝ずに、救急車で心肺停止の患者さんが運ばれたら蘇生に行ったり、ICU(集中治療室)で状態の変化があれば見に行ったり。新生児を見ているお母さんみたいな生活を3カ月、していました。単純に計算して、超過勤務は月500時間になります。相方の男性研修医は二日酔いで倒れたことがありましたが、私は生理痛がひどくても頑張りました」