精神状態まで疑われたイーロン・マスクの「限界」

次のCEOを探した方がよいのでは…?

米東部時間の8月15日、現地メディアは一斉に、証券取引委員会(SEC)が電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEOがツイッターで発した株式の非公開化宣言に関する調査に乗り出したと報じた。

問題は、マスク氏が7日にツィッタ―で「株主から(1株当たり)420ドルでテスラ株を買い取って、株式の非公開化をできないか考えている。資金は確保した」と発信したことだ。SECは、このツイートに関する証言や書類の提出を求める召喚状を出したという。

これに先立つ13日、テスラが公表した「最新のテスラの私企業化」を見る限り、マスク氏は7日時点で、資金の出し手候補であるサウジアラビアの政府系ファンドとの約2年にわたる交渉しかしていない。まだファンドとの投資契約はおろか、テスラ内部の機関決定もなく、とても「資金は確保した」と言えるような状況ではなかった。

昨今のテスラが業績と資金繰りの悪化に直面していたことを勘案すれば、マスク氏は、生煮えの情報をツイートで伝搬したとして「風説の流布」に、また人為的に株価形成を歪めたとして「相場操縦」に問われても不思議は無い。

これまで次々に注目のベンチャー企業を創業し、世界的に著名な起業家になったマスク氏がなぜ、このような失態を犯したのか。今回は、その背景も含めて整理しておきたい。

 

悲運の連続

念のため、イーロン・マスク氏の経歴とテスラ社の概要をおさらいしておこう。マスク氏は南アフリカ共和国出身だ。1998年にオンライン決済大手ペイパルの前身となるX.comを創業。2002年に、再利用可能な宇宙船の開発など宇宙輸送の本格化を目指すスペースX社を設立した。さらに翌2003年には、テスラの創業に参加し、2008年からCEOをつとめている。

テスラは、カリフォルニア州のシリコンバレーに本社を置く電気自動車メーカーだ。2008年に電動スポーツカー「テスラ・ロードスター」を販売して市場に参入した。次いで2009年に高級4ドアセダン「モデルS」、2012年に高級SUV「モデルX」を投入。この間の2010年にはナスダック市場への株式公開や、日本のパナソニック、トヨタ自動車との業務提携を果たして大きな話題になった。同社の自動車は、最新の自動運転技術を搭載していることでも知られている。

創業から急ピッチで業容を拡大して注目を集めてきたテスラだが、2016年に、それまでの車種より低価格の量産型セダン「モデル3」の発売を打ち出してからは、試練の連続だった。

業績をみても、四半期ベースで最終損益の黒字を確保できたのは2013年1~3月期と2016年7~9月期のわずか2回だけである。

将来性を重視するはずの株価も、2017年9月に終値ベースで385ドルという株式公開以来の高値を付けたあとは伸び悩んできた。

モデルSのリコールをはじめ、テスラの足を引っ張った要因はいくつかあるが、深刻だったのはモデル3の量産化に手間取ったことだ。早くからネバダ工場での生産能力を週5000台体制にすると公約してきたが、2度にわたって延期。ようやく今年6月の最終週に達成したものの、当初計画に比べてほぼ1年遅れという体たらくだった。

量産化で苦戦した原因は、AI(人工知能)やロボットの投入で生産性を向上する戦略が、画餅に帰したことだ。かなりの部分を人海戦術でしのいだものの、40万件の予約に応えられず、売り上げを確保できなかった。手元資金も激減した。

挙句の果てに、テスラが部品会社に対して過去に支払った代金の一部返金を要請したという報道も飛び出した。米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルが7月22日に報じたもので、テスラの資金繰り懸念が一気に高まった。

完成品のメーカーが部品のサプライヤーに対して値下げを要請することはそれほど珍しくないが、すでに支払った代金の返金を求めることは極めて異例とあって、テスラの経営不安説まで囁かれる始末だった。

実際のところ、テスラが8月1日に発表した2018年4~6月期決算は、四半期として過去最大となる7億1753万ドル(約800億円)の最終赤字を計上する惨憺たるものだった。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら