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星稜の「逆転サヨナラ敗北」にみる、甲子園で勝てる監督の条件

なにが「凶」と出たのか?
高校野球の主役はあくまで選手たちである。

しかし、激戦を勝ち抜いて栄冠をつかみとるためには、指導者である監督の力が大きいと言わざるをえない。何度も頂点に上り詰めた監督や、弱小県に初の栄冠をもたらした監督は名監督と評され、選手以上の注目を集めることもある。

そんな名監督たちに取材を重ねて、『高校野球 名将の言葉』を著したスポーツライター・中村計氏によれば、勝たせられる監督には、共通点があるという。

誰もができないと思うことを、できると思う能力

愚かであれ【stay foolish】——。

IT業界に革命をもたらしたアップル社の共同創業者、スティーブ・ジョブズの名言である。

 

この言葉は、あらゆる分野で言えるのではないか。

時代の変革者は、いつだって最初は「愚か者」と呼ばれてきた。もちろん、高校野球の世界でも。

近年では、駒大苫小牧を2004年、05年と夏連覇に導いた香田誉士史がそうだった。それまで東北や北陸など「雪国」と呼ばれる地域で全国優勝したチームはなかった。それを最北の地・北海道の代表校がやってのけたのだ。

当時、北海道の住人で本気で全国優勝できると思っていた人は誰もいなかったに違いない。香田ひとりを除いて——。

「俺は本気で思ってたよ。勝ってやるって。優勝したとき、本当に描いてた通りになっちゃったって、思ったからね」

香田はこう自己分析をする。

「勝っても、これだってものはない。野球をいかにも知ってますっていう人に話を聞いても『ん?』って思うこと、あるんだよな。俺は今もわからないことだらけ。でも、それが武器だと思ってるから」

香田も勝つまでは、雪上練習などを敢行し、周囲の関係者に「野球をわかってない」と揶揄されたことがある。本人はそれを「武器」だと思い、周囲はそれを「弱点」だと思っている。天才と凡庸の溝は、かくも絶望的なまでに広く深いものなのだ。