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現場はパニック! キャッシュレス先進国・スウェーデンの「闇」

「現金を突然奪われた人たち」の悲劇
綿貫 朋子 プロフィール

現金をあつかう銀行がどんどん消えていった

こうした電子決済の普及で、一般的に市民の利便性は増したと言っていいだろう。

数年前まではお馴染みの光景だった、週末前に現金自動預払機に並ぶ人の長い列も近頃はほとんど見かけなくなったし、私の周囲でも、とりわけ若年層に「現金は持ち歩かない」という友人が少なくない。

彼らの「財布」は、スマホとそのケースに入ったカードだ。スウェーデン中央銀行の調査でも、消費者3人のうち2人が「現金なしでも(生活に)支障はない」と答えている。

ただ、スウェーデンのキャッシュレス化は利点ばかりなのか、と聞かれたら、到底首をたてに振ることはできない。現金という選択肢が減ったことで逆に不便を感じる場面もあるし、さらには、キャッシュレス化のうねりで問題に直面している人も多いからだ。

指摘されているのはまず、高齢者や障害をもつ人々、ITインフラが整備されていない地域の住人や移民といった、電子決済サービスの利用機会が限定される人々の問題だ。

スウェーデン全21の県からなる「県組合」がまとめた「基本的な支払い業務の観察・2017年」という資料には、経済的、身体的、技術的な理由などさまざまな事情からスマホやPCなどを持たない・持てない人々が、キャッシュレス化の波を受け、現金の入出金や生計費の支払いといった「基本的な支払い業務」に不都合を経験していることが、各地から報告されている。

主要銀行が近年、現金を取り扱う支店を全国的に大幅に削減したことなどが原因だ。こうして、21県のうち約半数の11県が、「高齢者の基本的支払い業務は、満足のいく状態ではない」と結論づけている。

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そうした問題に対し、各県は現金取り扱い関連業務を代行する民間業者を立てるなどの対策を講じているが、もしこのままキャッシュレス化が進めば、現在財源としている国の補助金では対応が追いつかなくなる状況だという。

現金の必要性については、年金生活者の全国組織「PRO」も声を上げている。

 

スウェーデン最大級の市民団体であるPROは、デジタル決済の普及を歓迎しつつも、現金の使用が難しくなったり割高になったりした場合、まず苦境に立たされるのは年配者や障害をもつ人々、中小企業や過疎地の住民等だ、と指摘。

2016年には、「現金の取り扱いに銀行はもっと責任をもつべき」と訴えるとともに、現金を残すよう求めた約14万人の署名を政府に提出した。署名は、同団体のホームページ上で今も増え続けている。