大江千里、47歳からの「第二の人生」を後押しした10冊の本

ニューヨークにジャズ留学…それから

僕のアイドル

僕は47歳の時、それまでのキャリアを捨て、ニューヨークにジャズ留学をしました。音楽大学で若者らと共に学び、52歳で、ジャズピアニストとして再デビューをしたんです。レコード会社を立ち上げて、一人で経営もしています。

そんな僕が今、『太平洋ひとりぼっち』を読み返すと、海を渡るとか、冒険するとか、一人で旅をするとか、自分の人生と重なり合う大切なキーワードが詰まっていて、改めて堀江謙一さんは僕のアイドルだと感じますね。

中学3年生の時、この本で読書感想文を書いたんです。6メートルのヨットで太平洋を横断する勇気に感動して「一歩一歩の歩みが大海をも渡る力につながる」と書いたら、着眼点がいいと先生に褒められ、嬉しかった(笑)。

 

堀江さんは大胆であると同時に、とても用心深いんです。準備を周到にして、毎日のルーティンをきっちり決めて進んでいく。綿密なタイニー(小さな)ステップが、やがてジャイアントステップになることを、この本から学びました。

冒険や未知の世界に憧れるのは、子供の頃からの性分だったんです。サンタクロース(だった父)にもらった『ライオンと魔女』が大好きで、主人公たちを真似て、家の箪笥の奥にナルニア国への入り口がないだろうかと、いつも探していましたね。現実と空想を行ったり来たりしている、ちょっとふわふわした子供でした。

22歳の時、シンガーソングライターとしてデビューしたわけですが、影響を受けた人の中には荒井(松任谷)由実さんや、少し時代は遡って、安井かずみさんがいました。

『わたしの城下町』や『よろしく哀愁』などの作詞で知られる安井さんは、とにかくたくさん詞を書いた人。僕はデビュー後、新曲をどんどん出していかなくてはいけない時期に、安井さんの手法を学びました。

わかりやすくキャッチーで、かつ人が選ばないような言葉の組み合わせをサビに持ってくる彼女の詞に惚れていたからです。

その安井さんは、本当はどんな人間だったのか。『安井かずみがいた時代』を読めば読むほどわからなくなっていく……。渡辺プロダクション名誉会長の渡邊美佐さんや吉田拓郎さん、元旦那さんなど26人が安井さんを語りますが、証言者によって少しずつ、時には大きく、安井さん像は異なります。

世間でベストカップルとされていた安井さんとトノバン(加藤和彦)夫婦に対しても、賞賛のみではなく、えっと驚くような冷静な証言も飛び出す。

欲しいもの全てを自分の力で奪い取っていく強い安井さんと、か弱い繊細な少女のままの安井さん、そのどちらもが読み取れて、考え込んでしまうんです。

結局のところ、どんなに仲良くお喋りをして、優雅にシャンパンで乾杯していても、他人は永遠に未知のものだし、人の心の中は迷宮なのでしょう。それでも理解したい、わかりたいと願うから、人間は厄介で面白いのですが。