2018.08.21
# 外食 # キャッシュレス

好調・串カツ田中が、あえて「キャッシュレス化」を進めない理由

飲食店経営の知られざる苦労
我妻 弘崇 プロフィール

消費者に有利すぎるクレカが仇となる

そもそも日本のキャッシュレス化は、クレジットカードに紐づく形で進行するいびつなレールの上をひた走っている。これはひとえに日本のクレジットカードが、日本独自の発展を遂げ、極めて汎用性が高いものになっているからに他ならない。

一例を挙げれば、日本は「マンスリークリア方式」つまり、「翌月一括払い」が一般的であるのに対し、欧米では一定額を分割で支払う「リボルビング(リボ払い)」専用として使われ、一括&マンスリークリアは一般的ではない。

それゆえ欧米では、一括で引き落とすためのカードとしてデビットカード(口座から一括引き落としで支払うカード)の普及率が向上し、クレジットカードとデビットカードが両立する生活習慣が根付いた次第だ。

リボ払いはその性質上、利用者が手数料を支払っていく形になるが、日本でクレジットカードのリボ払いを利用している人は、ほとんどと言っていいほどいない。コンビニでもスーパーでも一括で買い物をすることができる日本のクレジットカードは、利用者に手数料がかからずに決済ができる世界でも稀有な「チートアイテム」になっている。

 

ところが、海外では一括が前提になっていないことに加え、手数料を事業者が負担しなくていいように、対策を講じているケースもある。

イギリスやオーストラリアなどでは、一部、薄利多売のお店においてクレジットカードの手数料が事業者の売り上げの負担となるため、サーチャージ(Credit Card Surcharge)といって、手数料をカード利用者へ請求してもいいという条例がある。つまり、クレジットカードとの相性が悪い業態に対しては、事業者が手数料に悩まされることのないように救済措置が敷かれているのだ。

photo by iStock

ECサイトのようにクレジットカードがなければ成り立たない業態と、クレジットカードを利用されることでかえってデメリットが生じる業態があるにもかかわらず、日本はひとまずとは言え、利用者にとっての利便性が極めて高いクレジットカードに頼る形でキャッシュレス化の行路を突き進んでいる。当然、飲食店に代表される相性の悪い業態は、煽りを受けることになる。

キャッシュレス化、ホンネでは進めたい

冒頭で記述したように串カツ田中では、半年ほど前から赤坂店、麻布店など外国人やビジネスパーソンが集いやすい16店舗で、実験的にクレジットカードの導入を開始している。しかし、坂本氏は「導入後、目に見える効果はない。クレジットカードへの対応は珍しくないですから、導入したからといってお客様が来店してくれるわけでもない」と売り上げに変化がないことを強調する。

「勘違いしてほしくないのですが、我々としてもキャッシュレスになること自体は望んでいます。現金を検算する『レジ締め』の時間はスタッフの労力を使いますし、各店舗に設置する『入金機』の初期投資額およそ100万円も償却するのに時間がかかります。さらに警備会社が売上金を輸送するランニングコストもかかるため、キャッシュレスになるほうがありがたい。

ですが、現状のクレジットカードを前提としたキャッシュレス化では、現金支払いにかかるコストのほうが、クレジットカードの手数料を支払うよりも軽いという決断になるということです」

関連記事

おすすめの記事