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一体誰が描いたのか?法隆寺にある「最古の春画」の謎

聖なる場所の「俗なるモノ」

お世辞にもうまいとは言えないが

近年、成人向け雑誌を公共の場に並べるのはいかがなものか、という議論が絶えない。今年1月、コンビニ大手「ミニストップ」が、「子どもや女性への配慮」を理由に全国の店舗で、成人向け雑誌の販売を中止したことは記憶に新しい。

何かと槍玉に挙げられやすい成人向けコンテンツ。その先駆けともいえる「春画」が、法隆寺の五重の塔の天井裏に描かれているのはご存じだろうか。

奈良の法隆寺といえば、現存する世界最古の木造建築として世界遺産にも登録されている寺院。いわば、日本を代表する公共施設だ。一体なぜ、そんな場所に春画が存在しているのか。

 

法隆寺は607年に創建されたが全焼、700年頃に再建されているので、その絵は再建工事に携わった大工が残したといわれている。

日本では、古くから聖俗入り混じる様相が溢れていた。たとえば、今の時期に行われる「盆踊り」。鎌倉時代は「踊り念仏」と呼ばれていた。時宗の修行者による宗教的な行為で、「無我の境地」を目指す祈りであった。

一方、平民の間では、盆踊りの後に乱交やスワッピングが行われていたのだ。その大工も、厳かな寺院の空気にあてられて、俗なるものを残したくなったのかもしれない。

ちなみに件の春画は、1945年に法隆寺金堂の天井の桟を取り外した際、発見された。現在は公開されていないが、『法隆寺の至寶』(小学館)という本で確認することができる。もっとも失礼ながらお世辞にも上手とはいえない。

屹立した何本ものペニスが描かれているだけの、お粗末な墨画だ。とはいえ、法隆寺に残されたその落書きが、歴史的に確認された最古の春画といわれている。

大工が遊び心で描いたことから始まった春画は、いまや国内外で注目されている。'15年に東京で開催された「春画展」には、約21万人が来場するという盛況ぶり。今は排除の対象となっている成人向け雑誌も、いつか違った形で日の目を見るなんてこともあるかもしれない。(谷)

『週刊現代』2018年9月1日号より